524.今時消費動向 大衆から階層へ (2005/07/06)

日経ビジネス7月4日号に、「反古典の消費学」という特集が掲載されています。1億総中流と言われた時代は過ぎ去り、階層化が進んだ現在、大衆をターゲットとしたマーケットは大きく様変わりしたと書かれています。


「いつかはクラウン」と言うCMがありました。大衆車といわれたカローラに始まり、次にコロナ、マークIIと買い換えていき、最後はクラウンであがりと言う消費パターンは、誰もが年々所得を増やしていた時代には相応しかったのでしょう。


階段消費と呼ばれるこのパターンも、所得格差が開くにつれて過去のものとなり、今では階層消費の時代に入ったと言われています。


少し前までは、大衆のど真ん中を目がけてストライクを投げれば、間違いなく大当たりしていたのに対し、今はそれぞれの階層に対して、別々の製品を提案をして行かなければならなくなったようです。


パームの世界で言えば、たくさんの製品を市場に投入しながら、個々の製品の特徴がうまく消費者に伝わらなかったソニーのクリエのやり方より、Zire, Tungsten, LifeDrive, Treoと一見バラバラのように見えながら、それぞれ別の階層のユーザーをターゲットにしているpalmOneの方が、今の消費動向にマッチしているのかも知れません。


一方、階層に分かれてきたそれぞれの消費者が、それぞれ明確なポリシーを持って商品を選んでいるかというと、そうでもなさそうです。


女性用の白のカーディガンに青緑色のネックレスをセットにしたものが、単体で買うよりも高いにも関わらずよく売れた例があるそうです。以前ならコーディネートを楽しみながら別々に購入したものを、なぜセットで買うのか?


どうも自分で選ぶことが出来なくなってきているそうです。あるいは、自分で選んだものに自信が持てないと言います。


昔のように、みんなが同じ色、同じ形の服を着て歩いていたのなら、真似をしていれば済んだものが、今や大衆がいなくなってしまいましたから、自分なりの個性を表現しなければならなくなってしまったのです。個性が無い人でも。


以前、「351.選択肢と幸福感」という雑記の中で、選択肢が多くなればなるほど希望のものが見つかる可能性が高くなるはずであるが、最適なものを探し出すことが大変骨の折れる仕事になってしまう、と言う記事を紹介したことがありました。


さらに、選択した後で後悔したくないと考える人は、選択すること自体に苦痛を感じるようになると言うことでした。


あらゆる情報が溢れかえり、自分ではどれを選んだらよいか判断が出来なくなって来たときに、商品を提供する側が、選択の幅を狭める手助けをしてあげるのが、今時の消費者に対する新しいサービスとして注目されつつあるようです。


iPod shuffleが、覚えきれないほどたくさんの曲の中から勝手に選んでくれると言うのも、最適な選択をすることが苦痛になって来たからではないかと書かれています。


パームは、いろいろな使い方ができてとても便利なものです。パームで何をしたいか自分で決めることが出来る人には、その柔軟性が魅力になるでしょう。


しかし、選択の幅を狭めてあげた方が安心して手にすることができる人も、多いのではないでしょうか?


大衆がいなくなり、消費者はもはや一枚岩ではありません。パームコンピューターが、それぞれの階層に訴える魅力を持つ商品に、生まれ変わることは出来ないものでしょうか?(一体誰に問いかけているんだ?)