449.パームが甦る日10: 手のひらのインテリジェンス (2004/12/31)

パームがメモリー・デバイス無線LANを搭載した時、携帯電話やパソコンと互角の戦いが出来るようになるでしょう。その時、パームがモバイル端末として君臨する携帯電話にあらためて挑戦すると同時に、コンピューターのダウンサイジングが再び始まる可能性を秘めているのです。


この筋書きとは別に、今の手帳のユーザーにパームを使ってもらうためには、いったいどうすればいいのでしょうか?紙の手帳を越えるためには、何が今のパームに足りないのでしょうか?


一言で言うならばインテリジェンスが足りないのではないでしょうか?単に紙の手帳のフォーマットを焼き直しただけの今のパームには、インテリジェンスは感じられません。


「手で書いた文字を認識するのだから、インテリジェンスはあるはずだ」とおっしゃっても、それは機械好きだから言えること。紙の手帳は、認識なんかしなくても、書いたとおりの文字をそこに残せるのです。電子化のためのインテリジェンスには意味がありません。


「文字がデジタル情報になるからパソコンに転送することもできるよ」、では手帳のユーザーをパームに振り向かせることは出来ないのです。


ここからは私の希望です。パームに入力されたデータを、メモリーの中でデーターベースに一元管理して、すべてのアプリケーションでひとつのデータベースを参照するようにするのです。


これまでにも予定表とToDoを融合させる試みなどがありましたし、データ同士をリンクでつなぐ方法などはありました。ただこれは,使う人がすべてを管理してやらなければなりません。使う人がデータの構造を考えなくてもパームが自動的に行い、手帳を電子化するメリットを発揮するのです。


入力するときはひとつのデータだったものが、時間が経つと関連のあるデータが自動的に結びついている様な感じでしょうか。入力したデータが、予定表のどこに書かれているのかを意識しないデータベース構造が、パームの可能性を飛躍的に高めるのではないかと考えています。


入力する場合は、「1/5 12:00 会議」と入力すれば、予定であると認識してアラームの必要性や優先度を、必要に応じて自動的に質問するのです。また、電話番号らしき数字の羅列が入力された場合は、それがアドレス帳かメモ帳であることを判断して、さらに必要な情報があれば入力の必要性を問い、情報を揃えてくれるようなものを考えています。


キーワードを項目ごとに設定しておき、例えば時間なら、「12:00ー13:00」、「1200-1300」、「12.00-13.00」等は同じく予定表の入力だと解釈し、アドレスにある人の名前や電話番号が入力されたら、自動的にそのデータにリンクを張るなど。将来の時間を一緒に記入すれば予定表として、過去の時間なら日記として自動的に区別し、実はデータが格納されるのはひとつのデータベースで、どのアプリケーションからでも利用できるようにするのです。


データ・プロセッシング・マシンであるコンピューターにとって、データ構造は重要な意味を持ちます。データをどのように記録しどのようにして取り出すかは、コンピューターの能力を最も大きく左右する要素です。


すべてのアプリケーションで共有できるデーター構造を持つデータベースを再構築し、アプリケーション間の境界を取り去ることによって、パームの機能を柔軟で拡張性のあるものに変えることができないものでしょうか?


次に文字入力方法です。グラフィティはよい技術でしたが、手で書くより楽にはなりません。電子化する事によって手書きより楽に入力できなければ意味がありません。


グラフィティの欠点は、文字ごとにルールがあるため文字の数だけ覚えなければならないことです。ルールが必要な場合でも、1つか2つの基本的なルールだけを絞るべきでしょう。


グラフィティの技術を応用するのなら、何十通りもの書き方から選べるようにするとか、その人の書くパターンを文字ごとに記憶するなどの柔軟性が必要でしょう。


ここでは具体的な文字入力方法を示すことは出来ませんが、直接仮名入力を含め、手帳として十分な文字入力方法を提供することが、PDAが甦るための必要条件でしょう。


店頭でパームを試したとき、まず文字入力に快感を覚えるようでなければなりません。売場で文字入力に魅力を感じなければ新規のユーザーを増やすことが出来ず、結果として手帳には勝てないのです。


これを読まれた皆さんは、もっと画期的なアイディアをお持ちではないですか?


私は固く信じています。あと数年すれば、モバイルIT機器の主流はPDAになると。なぜ私がそう考えるのか?


それは、PDAが長い間使い続けた紙の手帳と、同じサイズのIT機器だからです。人間の手のひらの大きさは、そう簡単には変わらないのです。


「PDAの時代は終わった」と言うのは誤りであると断言いたしましょう。PDAの時代は、まだ始まっていなかったのです。この特集の最後に、私は大声でこう叫びたい。


「PDAの時代はこれからだ!」

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“449.パームが甦る日10: 手のひらのインテリジェンス (2004/12/31)” への10件の返信

  1. acheroma様、
    コメントありがとうございます。パームの良さが一番よく出ているのは、PalmIIIあたりの製品なのかもしれません。インプレッサ等は確かに車好きの人には受けるのでしょうが、数は出ないし儲けも少ないでしょう。マニア受けするものの常として、企業としては旨みが少ない商品です。ベンツやセルシオに乗る人は、そもそも車が好きな人は少ないと思います。マニアではないと言うことでしょうか。だけど企業は儲かる。ただ、世の中には、最初はマニア向けだったものが、次第に大衆のものになっていくことが多々あります。車の例えで言えば、オートマチック車の普及によって、女性ドライバーが増えた見たいな事がPalmにも起こると思います。つまりマニアでなくても使えるPalmです。そうなった時に初めて多くの人に認知されるようになるのでしょうね。それがPalmの愛好者にとって本当に喜ばしいことかどうか、判らないところですが。Palmをビジネスとして成功させるには、Palmをインプレッサ的なものではなく、セルシオ的に変えていかなければならないのでしょう。またコメントをお待ちいたしております。

  2. どうも初めまして。最近ふふふさんの所からたどり着いた者です。
    私ぐらいでしょうか、いまだにPalmIII(もちろん英語版、J-OSIIIx、8M換装済み)を使用しているのは。
    すでに色々うまく動かない所が出てきて数年経つのですが、買い替えるにはどうもコストパフォーマンスを含め、魅力的な物が無いのがここまで来ている現状です。
    こんな私が常々考えていることとして、やっぱりユーザーには多様性があるということです。要約すると、PDAを必要とする人の率は非常に少ないのではないかということです。
    私がこのようなものを購入する時の尺度として、そのもの自体がどれだけ使いやすいかというより、どれだけ改造して自分に使いやすくなるだけの幅があるかということを重視しています。
    車にたとえていうならば、セルシオやベンツSクラスに乗りたい人は大勢います。でも、それらのほとんどの人はその車をどうしようと思っていません。何か自分のお気に入りのものをそこに置く程度のことでしょう。ところが、販売台数としては非常に少なく、一般大衆からはいいように思われない車であるインプレッサWRXやランサーエボに乗る人は、ほとんどノーマルのまま乗っている人は少なく、誰もがどこかしらエンジン周りや足回りを改造して乗っています。そうでなくても改造したいと思って乗っています。私なんかは毛色が違いますが、愛車はジムニーです。やはり、カスタマイズの幅の広さはどの車にもけないものを持っていると思っています。
    PDAを使うことというのは、その物が持っているポテンシャルをどれだけ引き出すことが出来るか、またはどれだけ引き出そうとする探求心を持てるかということと繋がるのではないかと思います。先の車の話にも繋がりますが、完成された最高級のものが欲しい人にとって、PDAなどは面倒くさくてどうしようもないものかもしれません。でも、私などにしてみれば、そのことで自分の理想に近づけるのならば、カスタマイズの苦労は惜しみません。そのおかげで、今のPalmIIIの構成は、4年ほど前からほとんど変わっていません。
    結局、ベンツやクラウンに乗りたいと思うユーザーとは別の層がターゲットで、さらにパソコンを使うことに抵抗が無い層で、自分が求める理想にどん欲な層がPDAを積極的に使う層ではないかと思います。
    営業管理のために使われることも理想的な解だとは思うのですが、やはり積極的な理由でない限りPDAの良さが営業マンに広がるとは思えません。基本的に会社組織で新しいものを入れると数年は批判にさらされます。慣れてきた頃には次の批判になる制度やものが入ってきます。
    これらをふまえた結果、PDA全般にとっての課題は、どうやって一般大衆のものとして広がっていくかということは無理な気がします。それよりも、今の顧客から少しずつ間口を広げていくことが重要ではないかと思います。ただし、私もその解は持ち合わせていません。それでも、PDAの未来には、無限の可能性があります。この流れが途切れないよう、一ユーザーとしてこれからも期待していきたいと思います。

  3. わにぞ様、
    大変盛りだくさんのコメントをありがとうございます。私の10回にわたる特集に匹敵する内容に感激いたしております。PDAの将来に希望を持っていらっしゃるのはうれしい限りです。ホビーと実用を分けて考えるのは良いポイントだと思いました。実際、特長のある新製品を作ろうとすると、どうしても新規なものを追加していかなければならないと考えてしまうものです。それがかえってユーザー離れを引き起こしてしまうのでしょう。
    あるいは、趣味の世界にどっぷり入ってしまって、新しく来た人には全く判らないものになってしまうのでしょう。いまだにパームのシンプルなところが評価されるのは、実用的にそれで十分だからでしょうね。わにぞサンがおっしゃるように、高機能でありながら煩雑でないものが登場すれば、私たちの日常で本当にアシスタンスをしてくれるように思います。ただ、人それぞれで要求に幅がありますから、パームやソニーでもターゲットを絞り切れていないのかなと思います。私たちに身近で使われるPDAの将来を考えることは、未来の生活を創造することにつながっていくのではないかと思っています。これから先が楽しみです。

  4. 乗り遅れた感もあるのでコメントをしようか考えていたのですが、折角ですので書かせて頂こうと思います。
    私自身はPalmVからのPalmユーザなのですが、妻はシステムエンジニアなのですがデジタルデバイスが嫌いで昨年まで紙の手帳を使っていました。
    それがひょんな事からCLIE TJ-25を使うようになったのですね。私が数年に渡り散々Palmの良さを伝えようとしても頑として受け付けなかったのですが、紙の手帳の不便さを解決するものとしてPalmはどのようなものか訊いてきたのが切っ掛けです。
    彼女はPCでスケジュール管理をしているので2重管理にならないという点もCLIE購入の切っ掛けになりました。
    以前の彼女はPCでのスケジュール管理をしていなかったので希求力が弱かった部分があります。
    「PCとの強力な連携もできるが、スタンドアロンでもパワフルに使える」ということがPDAに求められていると思います。以前の妻のような紙の手帳でスケジュール管理をしている人にとって現在のPDAは不便と言ってもいいものだと考えます
    また、これは一般的な話になりますが、店頭販売時のデモ機のグラフィティがネックになっていたとも思います。展示品を触り「文字書けないよ」と去っていった人達を何度見た事か…。その中には若年層やデジタルデバイスを好むであろう人達が多くいたのです。
    Decumaは1つの解決策だったと思います。が、一般層に浸透するにはまだまだ敷居が高いと言わざるを得ないでしょう。
    「携帯で置き換えが可能だからPDAが廃れたというのは誤った認識」というのは間違いないと思います。周囲でPDAを実用レベルで使っていた連中は未だにPDAを使用していますし、携帯電話のPIM機能をビジネスレベルで使っているという人には会った事がありません。
    また、PDAと携帯がクロスしていくという考えに僕は同調できません。MAIL・ブラウジングは携帯の分野となると考えています。PDAでMAIL・ウェブブラウズを行うのは(極論ですが)マニア層だけです。一般層は携帯で充分と思うでしょうし、各キャリアのサービスは、より実用的なレベルで提供されるようになっていくと思います。
    一般層が携帯に求めるのは「ホビー」だと思っています。カメラやメールや携帯用サイトなどは「ホビー」です(一般層にとってはMAILやブラウジングもホビーです。ビジネス利用もされていますが、ごく一部と考えて差し支えない範囲と言っていいと考えます。そういう意味でホビーなのです)。携帯のPIMが使われないのはニーズが無い・使い勝手が悪いといったことではなく「ホビーとしての携帯」という無意識のカテゴライズから外れているというのもあるのではないかと思ったりもします。
    一方、一般層がPDA(現時点では手帳と言ってもいいでしょう)に求めるのは実用性・利便性です。煩雑な時点でアウトになるでしょう。一時的にPDAを使い離れていった層にとってPDAは煩雑に過ぎたのではないでしょうか。使わなくとも高機能の方がいいとする時代は過ぎたように思います。ユーザのニーズに合わせ機能を数段階に分けて実装するというのが理想なのかもしれません。
    ご指摘の通り「能率手帳」(私も以前使っていました)などは殆ど完成の域に達しています。それを超える利便性があれば一般層にアピールでき、新しいスタートを切れるでしょう。スマートフォンのようなデジタルデバイス好きにアピールするものではなく、多分もっとシンプルな形になると思います。シンプルで分かりやすく、しかし高機能(高機能≠煩雑でなければならないのは言うまでもないと思います)。
    それが実際にはどのようなものになるのか、それはPDAをこねくり回しながら苦しむふりをしながら楽しんでいる僕のようなユーザには分からないものかもしれません(ある種データウェアハウス的なものになるのかもと漠然と思ってはいますが、一般層にアピールできる内容になるか判断できなかったりします)。
    現在の機能で生産性を上げている人も少なからずいます。次のステージに移行した時にそういった従来のPDAユーザとの関係がどうなるのか、どのような変化があるのかなど興味は尽きません。
    PDAのこれからに期待しています。まだまだ終わるものではないですし、ニーズは確実にあるのですから。
    長文・駄文、失礼致しました。

  5. yamasina様、
    コメントをありがとうございます。そうですよね。せっかくコンピューターの端くれなんですから、もう少し賢さがあっても良いと思います。賢くないからパームを使うことによって、余計に煩雑になることもあります。秘書がそばにいるみたいに、煩わしいことを全て取り仕切ってくれるのが理想です。(それは無理?)

  6. わが意を得たり。私もパームを便利に使っていますが、手帳ユーザを転向させるにはインテリジェンスが足りないと常々思っていました。もっともっと便利になれば転向してくると確信しています。今は便利さが到底足りていないのです。
    ぱむとろさんは今回、主に入力系の話をされていますが、出力系でも、参照しているレコードについて自動的に関連項目をランキングして抽出してくるとか(もちろん関連付けは自動)くらいは軽くサクサクやってのけてほしいものです。

  7. Taka3様、
    コメントをありがとうございます。いろいろなご意見やアイディアを書いていただき、私も勉強になりました。今回の特集は、「なぜパームが消えかかっているのに手帳は売れているのか?」からスタートしています。パームのPIM機能がなぜ手帳に及ばないのかを考えた時、見たままの手帳をそのままパームの画面に移してきたのが失敗だったのではないかと思いました。せっかくの電子化が生かされていないのではないかと。それからパソコンですが、今のままで満足している人は少ないですから、必ず変化する時が来ます。その時に、パームを含めてPDAが携帯端末として提供できることを、今のうちに準備しておかなければいけないだろうと思っています。Taka3さんもインターネットによる可能性を指摘されておられますが、確かにその通りだと思います。でも全ての端末がインターネットにつながり、ホスティングサービスで何でもこなせるようになれば、ビジネスモデル的には携帯電話に似てくるような気がします。良く分かりませんが。また、ご意見お待ちいたしております。

  8. いつも楽しみに読ませてもらっています。
    毎回毎回、素晴らしい視点で問題提起されているので熟読させてもらっています。
    さて、今回の結論ですが、ちょっと違和感が遭ったので意見を書かせて頂きます。
    提案している内容を読んでいて Newton を思い浮かべました。Data 駆動型で Schedule や ToDo, Memo は Data の検索手段という形で実現する手法や、画面の何処に書き込んでも文字認識して登録を続ける手法では Device への負担が大きく値段も高くなると言う所を割り切り、各Dataを無理につなげず、またGraffitiの単純な書き順と文字と数字のArea定義で認識率を高めて安価な Device に進んだ Palm の流れを否定する様に思います。
    文字認識は必要なのでしょうか。ここを捨てるだけでかなり身軽になると思います。
    私は手帳の弱点である、新しい手帳にした場合の過去のDataの転記が無いのでPDAは便利です。
    過去の紙の手帳のDataやMemoをそのままScanner等で取り込み参照出来る機能を付けて、後は内容を付箋紙にでも印刷出来る機能が有れば、PDAは手帳を駆逐出来るのでは無いでしょうか。
    どちらにせよ、いくら Note PC が軽くなっても小さくなっても PDAとは違う世界にあると思います。手帳の様に気軽にDataを参照更新出来る機能が有れば、それこそが皆の求めているPDAなのではないでしょうか。
    PCのお世話になっている今のPDAは確かにおかしなDeviceです。PCは便利ですがPCに頼ったので今のPDAが曖昧になったのではと思います。
    例えば自分の情報がInternetに繋がる自分の Data Site に繋がり、いつでも参照更新出来るなら十分個人assistantになり得ると思います。
    ついでに Mail が読めて Home Pageの参照が出来れば十分だと思うのですが、如何でしょうか。

  9. 机上都市住民様、
    コメントをありがとうございます。PDAという業務的で漠然とした名前ではなく、ぴったりはまった名前の製品が発表されることを期待したいですね。本当はPDAが手帳に勝った負けたではなく、手帳文化の延長線上に新しいPDAがあると考えるのが妥当なのでしょう。

  10. こちらへの書き込みは初めてです。
    >「PDAの時代はこれからだ!」
    同感です。
    結局Palmユーザーというのは、不完全な製品を「使いこなして」いただけなのかもしれません。
    「次なるもの」に来年は是非期待したいところです。

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