アテネオリンピックの自転車種目チームスプリントで、自転車競技では日本初のメダルとなる銀メダルを獲得したそうです。日本チームの快進撃が続く今大会の中でも、特筆すべきものでしょう。
他の競合チームは、ほとんどがヨーロッパの国々でした。自転車競技と言えば、USでマウンテンバイクが盛んであることを除けば、ヨーロッパが名実共に本場と言えます。
日本のシマノ製の自転車部品は世界に認められるすばらしい製品ですが、ヨーロッパ製の自転車部品には長い経験に裏付けされたノウハウが凝縮されており、そう簡単に超えることは出来ないようです。
その本場ヨーロッパの強豪たちと、まともに競い合った末に銀メダルを獲得したのですから、快挙と言っても良いと思います。
USに住んでいたとき、街中に整備されたサイクリングロードを自転車で走ったら気持ちが良いだろうと思い、街の自転車屋でバイクを買いました。ロードバイクとマウンテンバイクの中間のクロスバイクと呼ばれるものです。
USの自転車屋は、買った人にメインテナンスの講習会を開いたり、自転車のツアーを定期的に開催したりします。私が買った自転車屋では、マウンテンバイクのツアーしか開催していませんでした。
試しにクロスバイクで参加できるかと店長に聞くと、首を横に振って、
「まあ、すぐにパンクするだろうね。」
と言われてしまいました。
ところが家の近くにもう一軒自転車屋があり、そこではロードバイクで街中を走るツアーを土曜日の朝にやっていると言います。早速、土曜の朝に早起きして行ってみました。
いやー、まだオープンしていない自転車屋の前に集まってくる参加者を見て、止めておけば良かったと真剣に思いました。来るやつ来るやつ、みんなすごい脚です。もりもりの筋肉がピストンのように動いています。
しかも、乗っている自転車がどれもこれも速そうなロードバイクです。クロスバイクで来ているやつは1人もいません。
10人ほどの参加者が集まったところで、今日のコースの説明が始まります。どうも自転車屋の店員がリーダーのようです。早速見慣れない顔の、ブヨブヨの脚でクロスバイクに乗った私に声を掛けてくれます。
「初めて参加するようだが、付いて来られない場合は無理をせず、自分のペースで走ってください。道はまっすぐなので迷うことはないでしょう。」
さて、ツーリングが始まり、リーダーは最初のうちは私のペースを伺いながら最後尾を走ってくれましたが、1列で走っていた集団が丘や谷を越えるたびに順番が入れ替わり、さながらロードレースの様子を呈するようになってきました。
かなり行ったところでいったん集合。そこからしばらく、リーダーと雑談しながら併走します。
「ロードバイクでもなく、しかも初参加で(ブヨブヨの脚で)良くここまで付いて来られたな。感心するよ。俺は知り合いが日本にいるから、日本の事はよく知っているんだ。ゲイシャ、フジヤマ、テンプラだろ?ところで、日本にはプロの自転車競技があってうらやましいな。」
私は、日本にプロの自転車競技があると言われてもピンと来なかったので、何の事かと聞き返しました。
「ケイリンの事だよ。日本にはケイリンと言うスポーツがあって、すばらしい選手がたくさんいると聞いている。」
競輪がスポーツという認識は、私には全くありませんでした。あれはギャンブルであり、スポーツのフェアーな精神からはかなり遠いものだと思っていました。しかし、最近ではサッカーの結果に賞金を掛けるようになりましたから、スポーツと賭事は本質的に近いものなのかも知れません。
さてツアーに参加したおかげで、それからの私のバイクの巡航速度は、格段に速くなりました。速いペースにはそれなりのリズム感があり、逆に疲れが少ないのに気付いたのです。天気の良い日には会社までの10マイル程の道のりを自転車で行くのが爽快でした。(会社の階段では膝が笑ってましたが。)
アテネオリンピックで、日本の競輪選手が銀メダルを獲ったと言うニュースを見て、「競輪はやはりスポーツだったのだ!」、と改めて実感した次第です。