351.選択肢と幸福感 (2004/06/14)

日経サイエンス7月号に、「豊かさが招く不幸」と言う記事が掲載されています。生活が豊かになるに従って選択肢が増え続けた結果、最適なものを選ぶことに苦痛を感じるようになってきていると述べています。


一般的にものを選ぶ場合、選択肢の数が多ければ多いほどより良い選択が可能になり、満足する結果を得られやすいと考えます。ところが、個人の性格の違いにより、選択肢の多さがかえって苦痛になることがあるそうです。


人間を性向によって2つのグループに分けます。1つ目のグループを「追求型」と呼び、すべての可能性を調べ上げて選択肢の中から最適なものを探そうとする人たちです。2つ目のグループを「満足型」と呼び、最適なものを探そうとはせず、自分が満足できる選択が一つでもあれば、それ以上の可能性があったとしても興味を示しません。


まだ食べたことがないコーンフレークが273種類あると聞いても、「満足型」の人は今朝食べたコーンフレークに満足していれば気にしませんが、「追求型」の人はもっとおいしいものがあるかも知れないと、あらゆるスーパーを探し回るのです。


いま10種類の製品があり、「満足型」の人はそのうち半分ぐらいの確率で製品に満足するとします。「満足型」の人は、数種類の製品を試すだけで満足できる結果を得ますが、「追求型」の人は10種類すべてを試して最適なものを選ぼうとするでしょう。


ところが製品の選択肢が100種類になると、「満足型」の人はやはり数種類試すことによって満足できる結果を得るでしょうが、「追求型」の人は100種類全部試そうとしますから、大変骨の折れる作業になります。


幸運にも一番最初にその人にとって最適な製品を試すことができたとしても、残りの99個の製品を確かめなければそれが最適かどうか判断できませんから、「追求型」の人はすべてを試さない限り納得できないのです。


そして「追求型」の人が、現実的にすべてを試す事ができない膨大な選択肢から、ひとつのものを選ばなければならない時、あとで必ず後悔するそうです。最適でないものを選んだ可能性がある場合、最適なものとの差(機会費用)を失ったことになり、損失を被ったと考えるからです。


また一般的に良いものを選ぶことができた幸せより、良くないものを選んだ不幸のほうが、精神的ダメージが大きいそうです。


欲しいものから選ぶと言う行為は楽しいものです。しかし、「追求型」の人にとって、あまりの多くの選択肢の中から選ぶ場合、選ぶこと自体が苦痛になり得るのです。


USでは、過去30年でGDPが2倍以上になり、それに伴い経済活動における選択肢が増えているのも関わらず、幸福感が低下しているそうです。自由に選択できる事が、かえって精神的な負担になってしまう事があるのではないかと考えられています。


それにしても、今のパーム・CLIE売り場はどんどん縮小され、選択する自由が失われてきています。さまざまなパーム製品が売り場に溢れかえり、多くの選択肢から選ぶことに精神的負担を感じてみたいものだ、と思われている方も多いのではないでしょうか?