337.秒速30万キロメートル4: それでも地球は回っている (2004/04/28)

確かに今、多くの小学生が天動説、すなわち地球の周りを太陽が回っていると信じていたら、自然科学の教育は一体どうなっているのだと思ってしまいます。「嘆かわしいことだ、そんな簡単なことさえ解っていないとは!」


しかし、大人にしても地動説がなぜ正しいかを正しく説明できる人は、少ないのではないでしょうか?ただ単に、事実であるように教わってきただけで、実験で確かめたわけでもありませんし、ロケットに乗って見てきたわけでもありません。


昔の人が長い間信じてきたのと同じように、現代の私達も、ただ目の前にある空を見ているだけでは、天動説が正しいのか地動説が正しいのか、よく分からないのではないでしょうか?


例えば小学生に、なぜ地球が太陽の周りを回っているのか説明して欲しいと言われて、すぐに答えが思いつく人がどのぐらいいるでしょうか?


そもそも、地動説コペルニクスによって唱えられたのは、16世紀になってからでした。それまでにも、航海で進路を決めるために不可欠の天文観測が発達していましたが、体系的に地動説を唱えるまでには至らなかったのです。


ガリレオの登場する17世紀には、天体望遠鏡が発明され、さらに詳しい天体の観測が行われるようになりました。しかし、太陽が中心になってその回りを地球などの惑星が廻っていると言うことを世間が認めるのには、さらに長い年月がかかったのです。


「それでも地球は動いている」、の言葉で有名なガリレオは、ピサの大聖堂の灯籠の揺れ方から振り子の等時性を発見しますが、同じ振り子を使って地球の自転を物理的に証明したのは、1851年フーコーによって行われた実験によるものとされています。


ところで、もし全ての天体が地球を中心にして、地球との引力によって引き合いながら、軌道上を1日1回、回っているとしたら、全ての天体の軌道が同じである必要があります。軌道とは、引力によって落ちていくと同時に、遠心力で外に飛ばされるのですから、同じ公転時間を保つには、同じ軌道上を同じ速度で移動していなければなりません。


ガリレオが、地動説を唱えていた頃、まだ天体がその相互間の引力によって、影響しあっていると言うことが知られていませんでした。すなわち、どのような法則で天体が動いているかが解っていなかったのです。


ガリレオが亡くなった同じ年(1642年)に、その意志を引き継ぐようにニュートンが生まれています。ニュートンが発見した万有引力の法則によって、初めて天体の動きを理論的に説明することができるようになったのです。


昨日の雑記で調べた地球から太陽までの距離を半径として、地球は365日かかって1周します。もし地球が自転せずに太陽が地球の周りを1日で公転するとすれば、とんでもなく早い速度で回らなければならず、軌道上にとどまることはできないでしょう。


「だから地球は回っている!」 地動説が確立するまでの道のりは、長く遠いものだったのです。


太陽が地球の周りを回っていると思っている子どもたちに、ただ「それは間違いで、地球の方が回っているんだ」、と答えだけを教え込むことより、先人たちが歩んだ科学の歴史を紐解いたり、振り子の動きからなぜ地球の自転が証明できるかを一緒に考えることが、必要なのではないでしょうか?