首都圏の地上デジタル放送に使う第2東京タワーの建設に向け、推進プロジェクトがNHKと民放5局共同で発足したそうです。
地上デジタル放送の受信障害を減らす為には、高さ600メートル級の第2東京タワーから強い電波を出す必要があるそうです。デジタル技術を使っても、相変わらず受信障害が起こると言うのも滑稽な感じがしますが、果たしてそのような巨大なタワーを建てる必要があるのでしょうか?
都心部では、如何にアンテナの向きを調整しても、周辺のビルやマンションによる電波障害を避けることは難しくなってきました。例えそれほど大きくないビルであっても、周辺の住宅への電波障害の原因となり得ます。
すでに都会ではケーブルテレビが普及してきています。ケーブルテレビのメリットは、受信障害がないと言うだけでなく、チャネル数が多いことを利用して、地上波放送以外の地域チャネルや有料放送を配信することができます。また、双方向性を利用してインターネットとしても利用されています。
高い塔を建てて強力な電波を発信すると言う物量作戦もあるかもしれませんが、それだけで受信障害が根本的になくなるとは思えません。新タワーの建設費が、既に敷設が進んでいるケーブルテレビを維持する費用より安いのならばメリットがあるかも知れませんが、高さ600メートルのタワーがそれほど安い物とは考えられません。
それ以前に、地上デジタル放送そのものの魅力があるかと言うことになるのですが、これまでと放送内容が大差ないとしたら、地上デジタル放送そのものの将来はあまり明るいとは言えないでしょう。
いくらチャネルが増えたとしても、内容のない「薄いコーヒーとお茶の出がらし」ばかりになってしまっては、どこかの「キツネが走る高速道路」と同じです。インフラの整備は社会を充実するためには重要ですが、だからこそ社会のニーズを正しく捉えていなければなりません。
インターネットの普及による危機感を持ち、価値ある情報を配信すると言う本来の姿を求めていかなければ、多様化した情報ネットワークから放送(broadcast)システムそのものが脱落する事になりかねません。
電話が変わり、新聞が変わり、広告が変わり、そろそろ放送も変わらなければならないでしょう。タワーが放送の権威であった時代は、とうの昔に終わっているのです。