クリスマスが近づいてきました。街角に溢れるばかりのクリスマスの飾り付けが、美しく輝く季節になって参りました。デパートはクリスマスプレゼントを買いに来るお客さんで賑わっています。
また最近では都会だけでなく住宅街でもクリスマスイルミネーションが輝く所が増えてきました。家の中に飾っているクリスマスツリーでは物足りないと見えて、屋外の庭木や植え込みの中に、そりを引くトナカイがいたりサンタクロースが立っていたりして賑やかになってきました。
クリスマスツリーも、大小さまざまなものが売られています。昔のお茶の間には似合わなかったのですが、最近のリビングルームにはクリスマスツリーが似合います。生活様式も変化がこのようなところにも表れています。
もみの木がツリーとしては知名度が高いですが、プラスチック製で売られているものは杉や松の類が多いようです。特にアメリカ北部原産の木がよく使われます。USではクリスマスのシーズンが近づくと、ガソリンスタンドやホームセンターで生の木が売られています。生の木は日本で言えば七夕の笹の感覚で、木の香りがあり部屋いっぱいに広がり人気があるようです。
ところで、クリスマスツリーはなぜアメリカ原産の木が使われるのでしょうか?
カナダのトロントに、マッケンジーハウスと言う史跡があります。昔オンタリオ州の知事だった人の家が、見学できるようになっています。1987年の暮れにそこを訪れたとき、クリスマスの装いが施された建物の中を見ることが出来ました。
中で案内をしてくれるのは当時の衣装に身を包んだ男の人で、本当に昔の人のような雰囲気を醸し出しています。当時の風習やクリスマスディナーのメニューについて詳細に説明をしてくれます。ダイニングには、そのメニューが蝋細工を使ってディスプレーされています。
地下にはキッチンがあり、これまた当時の装いのかわいく若い女性の方が、本当に昔の雰囲気そのままにたたずんでいて、昔のレシピで作ったクッキーと暖かいアップルサイダーをご馳走してくれました。窓際には、砂糖が三角錐型に固められたシュガーケーンがあり、削りながら使用していた様子が伺えます。
ところでクリスマスの飾り付けがされているのに、クリスマスツリーがありません。なぜツリーがないのかと尋ねてみました。
「なぜこの家には、これほどきれいにクリスマスの飾り付けがされているのに、ツリーが一つもないのですか?」
「実はクリスマスツリーが今のような形になったのは、もっと後のことなのです。クリスマスツリーの原型と言われているのはこれです。」
と指さされたのは、クリスマスリースのようなものでした。ただ、それはドアに掛けられているのでなく、丸い円盤のように天井からぶら下がっていました。
聞くところによると、クリスマスツリーの原型はこのようなリースの形をしていて、ドイツが発祥の地だそうです。
クリスマスと言えばツリーという先入観がありましたが、その原型がリースにあると言うことを初めて知ったのでした。
カナダ国内にあるこのような史跡では、どこへ行っても丁寧な説明を受けることができ、訪れた人に歴史を正確に伝えようとする姿勢が伺えます。比較的短い歴史ではあっても、過去に起こったことを事実として認識する重要性を理解しているように思います。
逆に日本は歴史が長いからか、過去に起こった事柄であってもそれをどのように解釈するかと言うところに視点が行き、歴史的背景にこだわる傾向があるように思います。
その結果、時が経つとともにどんどん事実関係の把握が困難になり、歴史が歪められて解釈されていくのです。まず事実を正しく把握し、それとは別の次元で考察を行わなければならないと思います。