年賀状のシーズンになり、いくつかのパーム系サイトでも年賀状の作成の話題が掲載されています。
年賀状には表と裏がありますが、実質的な年賀状の内容である裏が面倒であるのは当然として、表の宛名書きも相当に面倒であるわけです。
世の中には、達筆をして宛名書きを本物の筆を使って、あっという間に書き上げてしまわれる方もいらっしゃるとは思います。また裏の本文に関しても、干支の絵なども一筆書きで描いてしまわれる方もおられます。正に芸術的な才能と言えましょう。
このような芸術的な年賀状を作ることができない私のような一般人には、パソコンの年賀状ソフトはほどほどの見てくれの年賀状を、最小の労力で作ることができる救いの神であります。ましてや裏だけではなく表の宛名書きに関してもプリンター任せにできるのは、私のように字を書くことを得意としない者にとっては、欠かすことのできない物になっております。
パームの住所録さえ完璧にメインテナンスをしていれば、エクスポートか年賀状ソフトと同期を取る事によって、若干の修正を必要とするにしても、あっという間に年賀状の表書きを完成させることができるのです。
このようにパソコンの便利さによって、もう以前の年賀状の作り方には戻れないようになってしまいましたが、実は過去にはとんでもなく面倒くさい方法で、年賀状を作成していたことがあります。
今、年賀状として写真を送りたい場合、自分でパソコンでデジカメ画像を取り込んでも良いですし、フジカラーなどが行っているポストカード写真を使えば簡単にできます。しかし私が社会人になった頃は、まだそのような物はありませんでした。
今でも写真材料店で売られていますが、ポストカードになる白黒印画紙があります。フジブロマイドや月光といった銘柄があり、厚手のバライタ紙でできています。このバライタ紙は、現在主流のレジンコート紙(RCタイプ紙)ではなく、にかわに乳剤を含ませた印画紙であるため、印画紙の水洗や乾燥の工程が大変面倒でありました。
私の世代では、普段の白黒印画はRCタイプを主に使っていましたから、バライタ紙の処理をするのは年賀状の時だけで余計に面倒に感じました。
年賀状ですから、原稿になる写真だけではなく、文字を入れる必要があります。「謹賀新年」の文字を入れる場合、白抜きなら重ねて一度露光をすればいいのですが、黒抜きにしなければならない時は、2度露光が必要になり余計に手間が掛かりました。
露光、現像、停止、定着、水洗促進、水洗、乾燥と、それこそ浅草の手焼きせんべいのように一枚一枚手作りで作業をしていくのです。
いつも徹夜で作業をしておりました。また使用する写真や文字抜きのテンプレートの準備にも、結構な時間をかけていました。
最後にこの方法で年賀状を作ったのは子供が生まれた年でした。べた焼きで10枚ぐらいの子供の写真を1枚の年賀状に焼き付けたのですが、パーフォレーション(フィルムの穴)が写っており、ドキュメンタリー風で好評でした。
写真を見せる立場からすれば、べた焼きはあまり面白くないのですが、この方法はいつかやってみようと長い間構想を練っていた手法でした。結局、それを最後に白黒印画紙を使った年賀状は出さなくなりました。
今も、私のデスクトップ・パソコンの横には、Lucky G70と言う引き伸し機が鎮座しております。足元にある現像バットが、パソコンを使う時いつも邪魔になります。また使う日が来るのでしょうか?