151.DVFMとVVVF (2003/07/20)

DVFMは、LSIの低消費電力化の新しい手法と言うことで、Handheld
Engineの特徴の一つであるわけですが、カードスロットを削除してまで省電力化を目指したとすれば、かなり力が入っていると言えるでしょう。


トランスメタ社のCrusoeが発表されたときも、革新的な省電力手法が採用されていることに驚きましたが、今回はさらに発展させたアルゴリズムが開発されたのでしょう。


ダイナミックに負荷の状態を判断して、クロック周波数と電圧を調節することによって、最適なパフォーマンスと電力消費を実現すると聞けば簡単そうに思えますが、これがなかなかくせ者で、想像しているより難しいもののようです。省電力手法は、年々進歩してきている分野なので、バージョンアップする度により優れたものが提供されていくことでしょう。


ところで、DVFMと似たような話に、電車の電力制御の方式VVVFと言うのがあります。Variable Voltage Variable
Frequencyの略で、電圧と周波数を可変にして制御するものです。よく電車の発進時に、数回に渡って発振音が変化するのが聞こえれば、VVVFの車両です。


電車のモーターには、直流モーターが長く使われてきました。直流モーターは理科の実験で作ったのを覚えておられる方には懐かしいものですが、ブラシを使った整流子によって、極性を変化させています。


このブラシは、摺動部分があり磨耗するため、定期的な点検や交換が必要であったようです。電車のメインテナンスにおけるかなりの部分を、占めていたようです。さらに、電圧を制御するために、抵抗によって熱になっていた無駄な電力消費がありました。


ブラシがないモーターに誘導電動機がありますが、メインテナンス性に優れています。家庭で使われている洗濯機や掃除機、扇風機の類は、ほとんどが誘導電動機を採用しています。ただ、この誘導電動機の回転数は、電源周波数によって決まってしまいます。


電源が50Hzの地域と60Hzの地域で、洗濯機の回転速度が変わったりする事がありますが、これは誘導電動機の回転数が電源周波数の影響を受けるためです。


電車のモーターは、洗濯機等と違って、低速から高速までスムーズに可変できなければなりません。昔は、良いデバイスがなかったために不可能だったのですが、近年巨大なサイリスタインバーターの技術が発達して、電源周波数を連続的に可変する事が可能になってきたのです。


そして、今では直流モーターのチョッパ制御を経て、誘導電動機のVVVF制御による低消費電力化が、普及してきました。新しいCLIEの中でも同じように、電圧を変えたり周波数を変えたりして低消費電力化が行われていると思えば、電車の中でCLIEを使うのが楽しくなってきませんか?(そんなことでは楽しくなるわけがない!)