133.四捨五入は妥当か? (2003/06/25)

今日は、四捨五入のお話です。わざわざ説明するまでもありませんが、小学校で習って以来慣れ親しんできた、数字を丸める為の手法の一つです。


ある数字の桁に注目して、4以下なら切り捨て、5以上なら切り上げます。そうすると近いほうの切りの良い数字になりますから、その後の数字の扱いが楽になります。切り捨てる場合と切り上げる場合がありますから、一見最終結果に悪い影響を与える事はなさそうに思えます。


今、90から100までの数字が並んでいます。1の位を四捨五入するとき、四捨五入する前と後で、合計に変化があるかどうかを調べてみましょう。


90 → 90

91 → 90

92 → 90

93 → 90

94 → 90

95 → 100

96 → 100

97 → 100

98 → 100

99 → 100

100 → 100

四捨五入する前の合計は、1045、四捨五入した後の数字の合計は、1050です。


0から9までの数字で、0は切り上げも切り捨ても行われませんから、残りの1から9までの9つの数字で数の増減が起こります。1から4の切り捨ては9から6の切り上げに対応しますが、5を切り上げているのに対応する切り捨てがありません。切り捨てを4回、切り上げを5回行ったので、増加しているのです。


95を切り上げた時の5が合計の増加分になります。1の位の数字に0から9までの数字が出る確率が同じだとすれば、切り上げが必ず多く発生します。


また数字の取り方が5刻みの場合で、(79.5, 80.5,
68.0, 92.5, 84.0)のような場合に、下1桁を四捨五入した場合は、切り捨てがなく切り上げしか行われませんから、明らかに大きくなってしまい結果の妥当性に疑問が生じます。


そこで、5以外はこれまで通りに切り捨て・切り上げを行い、5の場合のみ50%の確率で起こる事によって切り上げるか切り捨てるかを選択する方法が考えられます。例えば、その一つ上の位の数字が奇数なら切り上げ、偶数なら切り捨てるなどの方法があります。(この方法では結果が偶数になりますから、後から2で割る場合などに有効です。)


このように数字を丸める方法を、四捨六入と呼び、測定値の計算などで広く使われています。必ず0から9までの数字が同じ確率で登場するとは限りませんし、母数の分布も傾向があるなど、その場合に応じた方法を採る必要がありますが、四捨五入には結果を少し大きく見せる傾向があるという事は、知っておく必要があります。


数字は一度結果が出てしまうと、途中の計算過程で何が起こっていたかが分からなくなるので、常に計算方法の妥当性に気を配りたいものです。

132.円周率π=3? (2003/06/24)

日経サイエンス8月号に、円周率πに関する記事が2つ掲載されています。


一つ目は、「TOPICS」の中の「コンピューターが明かすπの神秘」と言う記事です。


そもそもノイマン型のコンピューターを考案したのは数学者でしたが、純粋数学分野ではコンピューターは単なる計算機として扱われ、積極的に研究に応用するには処理能力が不足していたらしいのです。


ところが最近のコンピューターの進歩によって、今まで知られていなかった定数の規則性公式を発見する事ができるようになってきたそうです。その成果の一つとして、円周率の任意の桁の値を、公式によって求めることが可能になったそうです。


これまでの解法は前の桁の結果を使わなければならなかったそうですから、画期的なことだそうです。この公式を使って、これまでに計算により求められてきたπの値の検算作業が、進められているそうです。


ここまでが、円周率πの桁を増やしていく話です。二つ目は逆に桁を減らす話です。


「いまどき科学世評」と言うコーナーで、「地震防災とπ=3の勘違いと言う記事が掲載されています。この中で円周率πを、小学校の計算でこれまでの3.14からにするという改正がされようとしているが、とんでもないことだと訴えています。


3.14から3にするのは、計算の負担を軽減するのが目的ですが、それよりももっと重要な事を見失ってしまうと述べています。


円に内接する正六角形を書いたとき、六角形の頂点によって、円周は6等分されます。半径をrとすると、円周は2πr。これが6等分されると2πr/6でπr/3になります。もし、π=3ならば、6等分された円周はr、つまり半径と同じになります。


一方、正六角形の一辺の長さは、半径を一辺とする正三角形を構成しますから、半径rです。円弧と直線の長さがどちらも同じと言った、直感的に変な結果が起こります。


著者は、3.14でなくても3.1で良いから、3より少なくとも大きくしておかないと、計算して求めた結果が論理性を失うと警告しています。


ここまで真剣に考えなくても良いと思う人もいると思いますが、私はこの意見に賛成です。この正六角形の例は特殊なケースかもしれませんが、円周や円の面積が簡単な数字で表される物ではないと言うことを、常に感じておくことは必要だと思います。今は100マス計算が流行る程、計算力の重要性が再認識されているのですから、円周率の桁数を減らす必要はないでしょう。


有効数字を減らすと、一見計算が楽になって得をしたような気になりますが、元の数字が持つ意味をよく考えておかないと、結果の数字に意味がなくなってしまうことがあるので注意が必要です。


そう言えば、小学校で習う四捨五入でも、似たような話があります。

115.科学雑誌のピンチ (2003/06/05)

科学雑誌の日本国内での発行部数が、ピーク時の3分の1になったと言う記事、「科学雑誌ピンチ 若者離れて部数はピークの3分の1」が、asahi.comに出ています。発行数のピークは1983年だったそうですが、それから年々減少してきて、ついに3分の1になってしまったと言うのです。現在の発行部数を、同じ人口あたりでUSと比較すると、13分の1になるそうです。


ノーベル賞人気で、将来科学者になりたいと言う小学生が多いとも言われていますが、努力しないでノーベル賞だけもらいたいと言うのなら困りものです。今後科学に興味を持って、科学雑誌を講読するようになることを期待したいですね。


最近、小学生の習い事として、これまでの塾や英会話教室だけでなく、理科の実験をグループでやらせるところがあるようです。一人前に白衣を着て実験をするので、親には何か賢いことをしているように見えて評判が良いようです。


小学校の理科で習うことを実験するのですから、本来は学校でやらなければならないことのように思えますが、授業時間の制限などで出来ない部分を、塾として提供していると言うことなのでしょう。


最近、ゆとり教育週5日制授業時間が減っており、各人が自由に好きなことを勉強できる時間を作っていると言うことですが、逆に国語力が足りないだとか、計算が苦手だとか、理科の観察が苦手だとか、英語も必要だとか、パソコン教育の導入だとか,それにも増してやらなければならないことが飛躍的に増えています。


ただでさえ授業についていけない子供がいると言うのに、授業時間を減らした上に、英語やパソコンをカリキュラムに加えたりしたら、消化不良どころか下痢になるのは目に見えています。もし、今までやっていなかった英語を小学校に導入するのなら、まず優先順位の低い学習を削って、時間的な余裕を作ってから導入しなければ、余計に落ちこぼれを作るだけになりかねません。


最近になって、全国の小学校、中学校、高校で、学習内容に自由度を持たせた学校が指定されており、特色のある学校造りを目指し始めましたが、うまくいくかどうかは、その学校の先生にかかっています。バクチ的な試みであるとも言えます。


指定を受けた学校では、教育指導に知恵を絞り、これまでの枠にとらわれずに独自性を出すことができます。優れた方法を提案・実施したケースがあれば、他の学校にも水平展開して行こうというものです。


それぞれの学校の独自性を出すと言えば良く聞こえますが、要するに今はどのようにしたらよいか分からないから何か考えてくれと言うことですから、効果が現れて学校教育が改善されるのには、まだまだ時間がかかりそうです。

47.青少年科学体験祭り (2003/03/22)

財団法人日本科学協会が主催する”青少年の科学体験祭り”に行って来ました。子供が、学校で案内のしおりをもらって来たのですが、科学の楽しさを体験できると言うことで、なかなかおもしろそうです。どのような物があるのか興味津々で行くことにしました。


兵庫県の尼崎総合体育館で、総数100以上のブースがあり、それぞれ科学に関する実験を子供たちに体験させる催しです。未来を担う子供たちに、科学する心を養うのが目的のようですが、確かに理屈でなく実験で体験させてくれるので、子供たちの目も輝いています。


私的にも、燃料電池のテーマを扱って、電気分解と燃料電池を対比して試験管で実験していたり電磁誘導の実験をしていたり,楽しい時間を過ごしました。


実験をされている方も、PTAのボランティアの方や、学校の理科の先生の方が、丁寧に説明してくれます。日本の技術力の低下が叫ばれていますが、このような催しに多くの子供たちが参加することによって、少しでも興味を持つことができれば、すばらしい事だと思いました。


簡単なモーターを制作するブースでは、プラスチックの容器とエナメル線で、整流子を持たないモーターを作るのですが、エナメル線の皮膜を紙ヤスリで取るのを見ていて、私も小学生の時やっていたことを懐かしく思い出しました。


ベルヌーイの定理や、極低温の世界などという、難しそうな純粋な科学の分野には、あまり人が集まっておらず、人工のイクラの作り方や、ミルククラウンのストロボ撮影などは、わかりやすいからか、多くの人が訪れていました。


何せ100以上も、ブースがあり、それぞれが科学にちなんだ実験をしているわけですから、3時間ほどいた間に全てを見ることはできませんでした。


少しでも子供たちが興味を持って、不思議だとかどうしてとかと言った気持ちを持ったのなら、将来その疑問が解けたとき、科学する心が育まれるのでしょうね。