132.円周率π=3? (2003/06/24)

日経サイエンス8月号に、円周率πに関する記事が2つ掲載されています。


一つ目は、「TOPICS」の中の「コンピューターが明かすπの神秘」と言う記事です。


そもそもノイマン型のコンピューターを考案したのは数学者でしたが、純粋数学分野ではコンピューターは単なる計算機として扱われ、積極的に研究に応用するには処理能力が不足していたらしいのです。


ところが最近のコンピューターの進歩によって、今まで知られていなかった定数の規則性公式を発見する事ができるようになってきたそうです。その成果の一つとして、円周率の任意の桁の値を、公式によって求めることが可能になったそうです。


これまでの解法は前の桁の結果を使わなければならなかったそうですから、画期的なことだそうです。この公式を使って、これまでに計算により求められてきたπの値の検算作業が、進められているそうです。


ここまでが、円周率πの桁を増やしていく話です。二つ目は逆に桁を減らす話です。


「いまどき科学世評」と言うコーナーで、「地震防災とπ=3の勘違いと言う記事が掲載されています。この中で円周率πを、小学校の計算でこれまでの3.14からにするという改正がされようとしているが、とんでもないことだと訴えています。


3.14から3にするのは、計算の負担を軽減するのが目的ですが、それよりももっと重要な事を見失ってしまうと述べています。


円に内接する正六角形を書いたとき、六角形の頂点によって、円周は6等分されます。半径をrとすると、円周は2πr。これが6等分されると2πr/6でπr/3になります。もし、π=3ならば、6等分された円周はr、つまり半径と同じになります。


一方、正六角形の一辺の長さは、半径を一辺とする正三角形を構成しますから、半径rです。円弧と直線の長さがどちらも同じと言った、直感的に変な結果が起こります。


著者は、3.14でなくても3.1で良いから、3より少なくとも大きくしておかないと、計算して求めた結果が論理性を失うと警告しています。


ここまで真剣に考えなくても良いと思う人もいると思いますが、私はこの意見に賛成です。この正六角形の例は特殊なケースかもしれませんが、円周や円の面積が簡単な数字で表される物ではないと言うことを、常に感じておくことは必要だと思います。今は100マス計算が流行る程、計算力の重要性が再認識されているのですから、円周率の桁数を減らす必要はないでしょう。


有効数字を減らすと、一見計算が楽になって得をしたような気になりますが、元の数字が持つ意味をよく考えておかないと、結果の数字に意味がなくなってしまうことがあるので注意が必要です。


そう言えば、小学校で習う四捨五入でも、似たような話があります。