今回紹介してきたのは、敗戦真相記 -予告されていた平成日本の没落-と言う本です。原爆が投下されたわずか一ヶ月後の広島で行われた、永野 護氏による講演を書き下ろした本が再出版されたものです。
出版社のバジリコの紹介文にあるように、「官栄えて 国滅ぶ 無気力国家ニッポン」というフレーズには、現代の日本が抱える問題点がそのまま浮き彫りにされています。
日本がなぜ第2次世界大戦で敗戦したかを、昭和20年9月に詳細に渡って分析をしています。色々なところで書評が成されていますが、そのどれもが戦後間もない日本で、日本の敗戦の分析をこれほどまでに明確に行っているのは驚異だと感嘆しています。
その歴史的考察が正しかったかどうかは別として、なぜ敗戦したかが解らなかった国民が多かったにも関わらず、一人の人間にこれだけの情報が集まっていたと言うことに驚きます。
アメリカ人で、戦争を経験した人に言われたことがあります。戦前にアメリカに留学して、日本のトップに立っていた優秀な人たちは、日本とアメリカの国力の違いを実体験として理解しているはずであるから、アメリカと戦争をしようとは思わないはずだと。
この本の中でも、このことはポツダム宣言以降に記述に詳しいのですが、このアメリカ人の「日本が戦争をした原因」に対する考え方が、終戦後の日本の方向性を決める事になります。
今の日本において、経済が低迷していると言われていても、その根本的な原因を理解しようとしている人は少ないのではないでしょうか?バブルの時は、なぜか世界中のお金が日本に集まってきたのに、バブルがはじけたと同時にあれよあれよという間にお金が無くなって行き、おまけにそれまで海外の不動産を買いまくっていたのが反対に、日本に海外資本がどんどん入って来ているのです。一体なぜなのか?
「何か失敗をしたのかもしれないが、一生懸命やっていたはずだから間が悪かっただけだ」、と自分には責任がないと思いたがるのは、常日頃から成り行きに任せて行動しているからでしょう。
明治維新から80年で武力戦争に負け、戦後から50年で経済戦争に負け、しかも戦後から一向に手を着けられずに続いている官僚制度に、今なお根本的な解決策を取ることが出来ずに手をこまねいています。
2度あることは3度ある。3度目は何戦争と呼ばれるのか分かりませんが、小手先の器用さばかりに注力をすることをやめ、官僚主義を改め、科学的に物事を判断し、人格形成の教育を重視することを、遅蒔きながら今からでも始めなければ、第3の敗戦が訪れることは避けられないのかもしれません。