504.スカイパーム計画4: スカイプは何をもたらすか?(2005/05/19)

スカイプは、これまでの電話の世界を大きく変える可能性を秘めています。すでに1億回のダウンロードを記録し、多くの人々が世界中でオンライン状態になっています。企業で採用するIP電話としての需要も、今後高まってくることでしょう。


ただ、スカイプが電話システムの主流に躍り出ることができるかどうかは、まだしばらく様子を見る必要があるようです。日本では、NTTもYahoo
BBも、スカイプは恐れるに足らないものをして片付けているようですが、海外ではブリティッシュ・テレコムのように、スカイプのIT技術に強い関心を持っているところがあるようです。


スカイプの通話が無料になるという特徴は、単に電話料金の負担が減らせるだけでなく、同時に生活に変化が起こることを予感させます。


インターネットADSLによって固定料金つなぎ放題になったために、放送との垣根が崩れてきたのと同じような事が必ず起こるでしょう。常に電話をつないでおくことによって、全ての生活音を遠隔地にいる人と共有できるようになります。


例えば在宅勤務の場合なら、あたかもパートナーが隣の席にいるように意識しないで打ち合わせができたり、子どもの学校の授業参観を家にいながらすることができたり、あるいは単身赴任中のお父さんと、あたかも同じテーブルに座っているように夕食の会話を楽しむことができるようになるのです。


日経ビジネスExpressには、スカイプの実際の使用例が載っています。


留学でUSにいる夫と、東京にいる奥さんの間をスカイプでつなぎっぱなしにしておくと言うのです。そして、奥さんが「犬の散歩に行ってくるわね!」と言えば、USにいる夫が、「行ってらっしゃい。気をつけてね!」と言うのだそうです。


そしてしばらく無音が続いた後、しばらくして「ただいまー!」と奥さんが帰ってきたら、夫は「ああ、お帰り。暑かったかい?」なんてね。(このような生活に憧れる人もいれば、面倒くさいと思う人もいるでしょうね。)


スカイプは、今はパソコンやPDAがなければ使えませんから、広く普及させるためにはもっと扱いやすい専用電話機が開発されなければなりませんが、モトローラスカイプ対応の携帯電話機を開発中との事ですし、日本ではBUFFALO専用の固定電話機を販売する予定だそうです。


今後スカイプが、無料あるいは格安料金によってどこまで勢力を伸ばしていくか、注目したいと思います。


さて、話を「なぜ現時点でパームOSがサポートされていないか?」に戻してみましょう。


過去にも、Project Palm機長さんが紹介されていたように、昨年の9月ごろにはパームOS用のスカイプが発表されると言う噂が広がっていたのですが、今になっても発表されていません。また海外の嘆願サイトには、Skype for PalmOSのページに多くの希望が寄せられています。


PalmOneから新しく発表された、mobile managerシリーズのLifeDriveにはWiFiBluetoothが内蔵されていますから、ぜひともスカイプをインストールしたいところです。


しかし、ここまでパームOSのサポートをしないのには、何か訳があるのでしょうか?パームのスマートフォン契約の中に、他の方式の携帯電話との契約を禁止する条項があるとか、スカイプのパートナーが圧力をかけてパームへのサポートをさせないとかが考えられなくもありません。


スカイプと同じような技術を、独自に開発しようとする企業もあるそうです。今は平静を保っている電話会社も、今後の動向によってはいつまでも安泰でいられるとは限りません。


スカイプの登場によって、電話業界は大きく変わるに違いありません。通信キャリアや機器メーカーは、激動の電話業界の中でもう一度シャッフルされることでしょう。


そこに、パームが大きく飛躍する可能性が秘められていると思うのは、私だけでしょうか?

503.スカイパーム計画3: スカイプを使ってみよう (2005/05/17)

今、新しいIP電話として注目を集めているスカイプは、次のようなビジョンを掲げています。


Skype は、優れた音質の通話サービスを世界中の消費者に無料で提供して通信業界を変革するグローバルP2P テレフォニー カンパニーです。

この中のすぐれた音質無料と言うのが、スカイプの特長を端的に表しています。すなわち、



  1. スカイプにユーザー同士なら、世界中どこでも無料で通話することが出来る。
  2. 世界中の一般電話や携帯電話とは、格安の料金で通話することが出来る。
  3. これまでの携帯電話より、すぐれた音質で通話することが出来る。

ルクセンブルクに本拠地を置くこの会社は、38歳と28歳の共同創業者によって設立されました。まだ事業が始まったばかりであるにも関わらず、パートナー企業にはジーメンスモトローラを始め多くの企業が名を連ね、日本からはLivedoorBUFFALOが参加しています。


スカイプの面白いところは、始めから無料でユーザーに提供するためのビジネスモデルを構築しているところです。


通常のIP電話は、一定の通信品質を保つために、サービス分配器(SMD)を使って、一般のインターネットの回線とはL2レベルで別の専用回線に分けて、信号のやり取りをしているそうです。


その為には専用回線と同時にIP電話の信号をコントロールするためのサーバーが必要になり、多大な投資とメインテナンスを継続的に行う必要があります。


しかし、スカイプは専用の回線を必要とせず、一般のインターネットの回線だけを通じて通話を行うことが出来ます。その為に、複数の伝送経路を常時確保し、回線の品質の変化に応じて動的に経路を切り替える技術を採用しているそうです。


又、IP電話のサーバーに代わってユーザー間のアドレス情報を制御するために、ユーザーのパソコンの中で処理能力に余裕のあるマシンに、サーバーの役割を動的に割り振っているそうです。


この為、専用回線やサーバーに投資することなく、ユーザーの増加に対応できるIP電話システムを構築できるのです。


では早速無料のソフトウェアをダウンロードして、試してみることにしましょう。スカイプのサイトから、無料のダウンロードページに進むことが出来ます。登録とインストールが完了すれば、すぐに通話を試すことが出来るようになります。


既に知り合いがユーザーになっている場合は、すぐにトライアルが出来ますが、話し相手がいない場合は試すことが出来ません。そんなときはLivedoor Skypeに行けば、4人の方々がスカイプのお試し相手として待ちかまえています。


何と、あの堀江社長もいらっしゃるではありませんか。ひょっとして直接話すことが出来るかも知れません。ただ実際は、録音されたメッセージであったりうまくつながらなかったりと、運試しと思った方がよいかも知れません。


さて、ソフトウェアをダウンロードされた方はお気づきだと思いますが、スカイプが現在対応しているOSは、



  • Windows 2000 and WP
  • Mac OS X 10.3以上
  • Linux
  • PocketPC 2003

の4つだけで、残念ながらPalmOSには対応していません。


この理由はいくつかあるようですが、「PalmOSはマルチタスクに弱い。」とか、「WiFi対応のPalm機は、DellのWiFi対応PocketPC機より高すぎる。」などと言われているそうです。


とりあえず、PalmOSへの対応が近々アナウンスされると言う噂が長い間ささやかれていますから(?)、今は期待しながら待つしかないようです。


さて、地球上のあらゆる通信ビジネスを、すべて消滅させてしまうとも言われたスカイプが、私たちの生活に何をもたらすかを、次回は考えてみたいと思います。

502.スカイパーム計画2: 携帯電話に勝る携帯電話 (2005/05/16)

以前からパームが普及しない理由に、携帯電話が挙げられていました。確かに、携帯電話とパームの両方を普段から持ち歩くにはかさ張ります。


どちらかひとつに絞るとすれば、多くの人が携帯電話を選択するでしょう。携帯電話は、既に生活に欠かすことのできないアイテムになってしまったのです。


ですから、たとえすばらしい機能を持ったパームを数多く開発したとしても、買っていくお客さんは限られてしまうのです。


携帯電話を欠かすことができないならば、そして同時に2つの携帯端末を持ち歩く人が限られているならば、パームを携帯電話にするしかありません。


そのひとつの答えがスマートフォンです。しかし、スマートフォンをユーザーが自由に選べるようになるには、携帯電話キャリアが、端末の仕様を開放しなければなりません。


今の現状は、電電公社時代の黒電話と同じと言えるでしょう。


現状では、携帯電話のほとんどの機能は、携帯電話キャリアのサービスとして提供されています。端末そのものが持つ機能は限られているため、その都度サーバーにアクセスする必要があります。このようにサービスを回線経由で提供することは、携帯電話会社にとって重要な意味を持ちます。


では、一つだけ持ち歩く携帯端末として、多くの人にパームを選んでもらうためにはどうすればよいでしょうか?


パームが、携帯電話に勝る携帯電話になるしかありません。では、携帯電話に勝る携帯電話とは何でしょうか?


携帯電話会社の生命線は、キャリアです。携帯電話会社は、キャリアを維持するために、多くの投資をしています。当然、その投資をまかなう為にユーザーは課金されます。


ユーザーは、同じ機能なら少しでも料金の安い、お得な料金プランを設定している携帯電話にすぐに乗り移ります。機能・サービスと料金のバランスに敏感に反応するのです。


料金の安い電話としてIP電話がありますが、一定の回線帯域を確保するために、一般のインターネットとは別の専用回線を必要とします。つまり、携帯電話と同様に、キャリアの維持・管理が固定費として発生します。


ところが、今回取り上げるスカイプには、回線を維持する必要がありません。つまり、固定費が要らないのです。ソフトウェアも無料でダウンロードできますから、加入者間の通話なら世界中一切無料です。


スカイプを装備したパームで、携帯電話の牙城を切り崩すことはできないでしょうか?

501.スカイパーム計画1: スカイパーム計画とは? (2005/05/15)

これまでにもPalmTrotterでは、パームが普及するための販促作戦を展開して参りました。パソコンより小さいコンピューターを目指した「ダウンサイジング推進計画」や小学生にパームを使ってもらおうとした「パーム普及作戦小学生編」、あるいは紙の手帳との比較を試みた「パームが甦る日」など。


しかし、どれもパームの市場回復を促すには十分ではありませんでした。


以前は、日本で圧倒的に普及している携帯電話が、パームにとって最大のライバルであるという意識がありました。そこでパームが携帯電話に対抗するべく、対策を考えたこともありました。しかし、携帯電話会社によるユーザーの囲い込みは思いの外強力であり、そう簡単に崩せるものではありませんでした。


私たちは、ソニーが日本でのクリエ販売を中止するという決断を下したときに、大きなショックを受けました。パームOS搭載機が、日本で結局普及しきれなかった事を、残念に思いました。


しかし、ソニーがクリエをやめるのは、あくまでソニーの製品戦略上の話しです。パーム機を継続して提供していくことに、ソニーとしての意味を見いだせなかったからであり、他のソニー製品に比べてクリエの優先順位が低かったに過ぎません。


現に日本以外の海外では、パームOSを搭載したスマートフォンが普及し始め、PDA全体での出荷額も増加する傾向にあります。では、なぜ日本ではスマートフォンが普及しないのでしょうか?


それは、携帯電話会社が閉鎖的だからです。携帯電話会社がすべての機能を自分でコントロールし、端末機の市場を開放していないからです。これでは、昔、電電公社が黒電話を強制的に貸与していた時代と何ら変わりません。


勿論、PIMの機能を携帯電話に付加したり、スマートフォンのような機能が提供され始めてはいますが、所詮携帯電話会社のビジネスモデルの一部であり、キャリア側が必ず儲かる仕組みが組み込まれています。様々な機能を携帯電話のキャリアが提供することによって、ユーザーの囲い込みが続いているのです。


ところで、最近「日経コミュニケーション」「日経ビジネス」と言った雑誌に、新しいIP電話の記事が相次いで掲載されています。「スカイプ」(Skype)と名付けられたこの新しいIP電話には、これまでにない大きな特長がいくつかあり、海外はもとより日本国内でも普及し始めているようです。既に海外では、PocketPC用のスカイプを採用した機種が販売されています。


このスカイプパームに採用することによって、これまで携帯電話会社が築いてきた「キャリアの壁」を崩すことが出来ないでしょうか?


スカイプによってパームを再び甦らせ、さらにパームが携帯機器の主役に躍り出ることは不可能でしょうか?


この特集では、スカイプとパームの融合を「スカイパーム計画」と呼び、その可能性を探って行きたいと思います。

483.静かなブームもまた楽し (2005/03/14)

Palm OS Users Meeting 2005 in Tokyoも、盛況のうちに無事終わったようです。主催者の皆様と参加された方々はお疲れ様でした。


ソニーがCLIEの販売中止を決めた後だけに、大変意義のあったイベントだったと思います。いろいろなサイトで報告されているように、大変盛り上がったようです。


恒例のじゃんけん大会もあったようで、パームの新旧さまざまな機種が登場していたようです。新機種が次々と発表されている時なら旧機種の人気は新型には及ばないでしょうが、今後新機種が望めない今の状況では、本当に必要な機能が搭載されていれば、新しかろうが古かろうがあまり気にならないかも知れません。


そういえば、30年程前には電卓ブームがありました。多くの企業が参入し新機種が次々に投入され、それらもひと月もすればすぐに旧型扱いになりました。テレビや雑誌の広告にも必ず登場し、「答え一発!」などのコピーが流行り、ルート計算ができる電卓が登場した時は、かなりセンセーショナルだったのです。


しかし、ブームはいつか必ず通り過ぎていくのです。


今でも電卓は売られていますが、昔と違って売り場の片隅にぶら下がっています。また100円ショップでも十分実用に耐えるものを見かけることがあります。


USでZireが発売された時、ブリックパックによる簡易包装が採用され、ディスカウントストアーのレジの横にぶら下げて販売されるようになりました。この如何にも安っぽい販売方法が、実は無駄を省き、細く長く販売を続けるためには不可欠なのかもしれません。


これからも日本語版パームの定番機種を、継続的に入手できるようにならないものでしょうか?どこかのベンチャー企業によって、英語版パーム本体にJ-OSをプリインストールした機種や、J-OSか日本語版パームOSをROMに焼き付けたチップを搭載した機種が廉価で販売されることは、あり得ない事でしょうか?


ブリックパックに入った昔ながらのパーム機が、電卓売り場の横に並ぶようになることを、期待したいと思います。