91.デジタル一眼レフカメラシステムを考える4: フォーサーズ・システムを検証する (2003/05/07)

新しいデジタルカメラの規格として、フォーサーズ・システムというものが、提案されています。オリンパスとコダックが開発をし、富士フイルムも賛同しているようです。


概略としては、撮像素子として、キヤノン・ニコンなどのデジタル一眼レフで採用されているAPSサイズより小さな4/3インチの撮像素子を使い、その結果レンズを小型化し、さらにレンズマウントと、レンズとボディー間の情報のインターフェースを規格化する事により、どのメーカー間であっても、レンズとボディーを組み合わせる事ができると言うものです。


小型の撮像素子を使うことによって、レンズの小型化と同時に、光線の入射角の問題を解決します。これまでの35mmフィルム規格にとらわれずに、デジタル一眼レフカメラとしての理想を目指す姿勢は、評価に値すると思います。


ただ、実際にこの規格によってデジタル一眼レフカメラを作ったとして、これまでのように一眼レフカメラが、カメラの主流であり続けることができるかと言えば、そうとは言い切れないように思います。


例えば、小型の撮像素子を使うことに関して言えば、すでにAPSサイズの撮像素子が実用化されているのに、敢えて画質を犠牲にしてまでレンズの小型化を目指す必要があるのでしょうか?


そもそも、撮像素子の撮像面の大きさを規格化する事と、フィルムのフォーマットを決めることは、同じように見えて、全く異なることです。


フィルムの場合は、その製造や、現像処理と言った、メディアとして規格を統一していなければ、工業的に成り立たない部分があります。しかし、デジタルカメラの撮像素子は、製品ごとに異なっていても、出力されるデジタル信号に互換性があれば、問題はないはずです。イメージサークルを規定するならともかく、撮像面の大きさを統一すること自体に意味はありません。


それから、マウントの共通化に関しては、レンズとボディーの互換性が全てのメーカー間で保てたとして、一体誰が喜ぶのでしょうか?


今でも、レンズ専業メーカーに対して、カメラボディー側の技術情報を開示しないカメラメーカーがあるのですから、喜ぶのはカメラかレンズの一方の技術がないか弱いメーカーだけではないでしょうか?


確かに、過去には、プラクチカマウントや、ペンタックスのKマウントのように、共通に使われていたマウントもありましたが、プラクチカマウントなどは、自動露出や自動焦点がない時代の物であり、各メーカーが競ってレンズからの情報を利用する現在では、マウントの共通化は、各メーカーによる新技術の発達を妨げる要因になるものと思われます。


今日の結論です。フォーサーズで提唱されている、撮像素子のサイズを固定することも、マウントを共通化する事も、一部のメーカーには都合が良いかもしれませんが、デジタルカメラ全体の発展を目指して開発された物とは思えません。APSフィルムを計画したときと同じような、小手先の変更だけでは、デジタルカメラの将来を担う事はできないと思います。


その昔、レコードからCDに移り変わった時、CDプレーヤーはレコードプレーヤーと同じ形になりましたか?これまでの一眼レフカメラをデジタル化するのに、何も同じ形にする必要はありません。これは、イノベーションです。過去の遺産にしがみ付こうとするメーカーは、必ず淘汰されるでしょう。


まず最初に一眼レフがありきではなく、デジタルカメラの機能を最大限に生かすことのできるカメラ形式の開発から、取り組んでもらいたいと思います。もっと、銀塩フィルムやこれまでの一眼レフカメラでは実現できなかった事を、デジタルカメラならではの斬新な機能を提唱して行ける、カメラメーカーの出現を望みます。


では、次回は最終回、「デジタルカメラの挑戦」をお送りします。