61.関西人はライカがお好き? (2003/04/04)

前々から気になっていたのですが、松下電器産業ドイツのライカ社と提携して、デジタルカメラを出しています。最初のモデルは、いかにも無骨で、ライカの名前さえつければいいだろうみたいな感じでしたが、ラインアップが充実してくるに伴い、お互いの技術が融合しあって、よくまとまったデジタルカメラになってきているように思います。


ライカといえば、エルンスト・ライツ社と呼んでいた時代に、ミノルタと技術提携して、距離計連動レンジファインダーカメラの名作を残したのが有名です。日本の銀塩カメラ史上、復活させたいカメラナンバーワンの座に君臨するライツミノルタCL・ミノルタCLEは、いまだにファンも多く、中古市場でも高値で取引されています。


このカメラを市場に出していた間、ミノルタはライツ社から多くのことを学んだと言われています。特にレンズの設計に関しては、日本とドイツの設計の思想の違いがあり、その議論を重ねることによって、多くの技術的融合があったとされています。このあたりのことは、アサヒカメラなどの写真雑誌で、復活させたいカメラの特集を組んだ時には、必ず話題に出て来ます。


レンズにおいて、設計の思想が違うと言うことは、実はとても奥が深い話で、私はいまだにあまり理解できていません。しかし、私の知る限りで言うと、レンズを解像力で評価するか、コントラストで評価するかと言う違いがあるようです。


解像力は、画像1mm辺りに何本の白黒の線を判読できるかと言うもので、官能検査です。一言に解像力と言っても、画像中心と周辺で異なりますし、水平方向と垂直方向でも違います。一眼レフカメラ用のレンズでは、画像中心200本/mm画像平均で100本/mmぐらいあれば高性能だと言われています。


これに対して、コントラストは、コントラスト減少率などで表現されますが、コントラスト比のある被写体を、どれだけ濃淡を分離して結像できるかを調べます。これも画像中心と周辺では異なりますので、コントラスト減少率90%の測定値の分布と画像の位置をグラフ化して評価します。


さて、日本のカメラメーカーは、解像力を重視しドイツのメーカーはコントラストを重視して、レンズの設計をすると言われてきました。それぞれの設計の違いが、写真にどのような違いをもたらすのでしょうか?


解像力の良いレンズで撮影すると、細かいところは写っているはずであるが、大きく引き伸ばしたりすると、力がないふにゃっとした絵になってしまい、対して、コントラストのしっかりしたレンズで撮ると、引き伸ばす前は、ピントが甘い感じがするが、大きく引き伸ばすにしたがって、くっきりと結像しているように見えるそうです。


ただ、実際にドイツ製のレンズで、写真にしたときの評価が高いものの中には、コントラストが高く、なおかつ解像力も高いものが少なくありません。例えば、ライツのズミクロンツァイスのプラナーなどは、画像中心で200本以上の解像力を誇っています。


これは、フィルムに写すことを前提にしていますので、フィルム自体の持つ粒状性やコントラストとの相関があることを考慮しなければなりません。考えてみれば、フィルムを使ったカメラの場合、画質を決めるのは光がフィルムに届く瞬間にその経路を構成するレンズとフィルムだけであり、フィルムの処理には、それ程の自由度がありませんから、レンズとフィルムが画質を決定づける全ての要素であると言っても過言ではありません。


デジタルカメラの場合は、CCDなどの素子の特性や、その後のデジタル画像処理過程との相性が、非常に大切になります。ですから、レンズの良し悪しは、銀塩カメラに比べてそれ程重要でないかもしれません。さらに、CCDなどの受光素子の特性もフィルムとは大きく異なるため、これまでのレンズの評価方法と、違った観点での評価も必要になってくるでしょう。


ミノルタ松下電器という、大阪を代表する企業が、ライカ社と年代は違っていても提携したと言うことは、何か関連があるのではないかと思ってしまいます。ドイツには、同じ光学メーカーの双璧を成す、カール・ツァイス社がありますが、ライカ社とはすこし指向が違います。カール・ツァイスはクールで繊細な感じで、対してライカ社は人情味を大切にする感じでしょうか。ライカ社のそんなところが、大阪企業に合っているのかもしれません。


ライカのカメラと言えば、相変わらず40万円ぐらい出さないと買えない高額品です。ミノルタと松下電器、大阪の庶民的な風土から生まれた企業が、そんな高額ブランドを庶民の手に届くようにしてくれたと考えることもできるでしょうか?