603.インド総まとめ (2006/10/11)

今回、インドのチームと一緒に仕事をする機会があり、5月頃からかなり密なコミュニケーションを続けてきたのですが、残念ながらプロジェクトそのものが中止になってしまいました。


毎日のようにメールや電話でコミュニケーションを取ってきましたから、さすがにプロジェクトを中断しなければならないのは残念です。今回インドの人たちと始めて一緒に仕事をさせてもらったのですが、彼らのグローバルな思考積極性には、見習わなければならないところが多かったと思います。


このサイトでは、何回かに渡りインドに関する話題を取り上げてきましたが、ここにインドの人たちと関わって際に感じてきたことを、まとめてみようと思います。


1.インド人の国民性


正しく国民性を語ることが出来るほどのおつき合いはありませんでしたから、あくまで第一印象に過ぎませんが、やはり若い国であるという印象が強かったです。


年齢的に若いと言うだけでなく、経済的にも若いと言いますか活気があるように思います。人も街も動き回っていないではおれないと言うところでしょうか。


それから、よくタイマレーシアの人は誠実で親切だと言われますが、インドの人もそれに近いように思います。確かにオートリキシャでぼられることもあるでしょうし、全体として治安が決して良いとは言えません。ただ、裏心懐疑心のようなものはあまり持っていないように思いました。


ただ、インドでも北の方に行けばまた変わってくるでしょうし、バンガロールはインドの中では特殊な街と言えるでしょうから、私の印象はかなり偏っているかも知れません。


ただ、総じて言えばインドの人たちと仕事を一緒にするのは、楽しかったです。また機会があれば、一緒に仕事をしたいと考えています。


2.インドの産業


バンガロールは、IT産業が中心となって大きく発展しています。マイクロソフトをはじめとするUSの大手IT企業が進出しています。ただ、そのほとんどがソフトウェアの開発に集中しているところが気にかかります。


確かにソフトウェアがインドの得意分野であるのでしょう。特にバンガロールは、数学や科学を学んだ学生を多く輩出する大学やカレッジがたくさんありますから、そこにIT産業が集まってくることは当然なのかも知れません。


ソフトウェア産業と言えば、オフィスのスペースと人とパソコンがあれば、すぐにでも始めることが出来ます。工場を建設する製造業に較べ短期的な投資額は低いでしょうし、それだけリスクも少ないでしょう。しかし、これは長期的にインドに投資を続けることが困難であると言うことの、裏返しなのかも知れません。停電がいまだに多く発生し、政治的にも地理的にも決して安定しているとは言えません。


中国のように製造業が発達すると、同時に素材産業やや機械工業、それに輸送業も発達し、産業のすそ野が広がっていくのですが、ソフトウェア産業の場合は、どうしても他の産業への波及効果が弱くなります。


製造業がすべてではありませんが、BRICsと呼ばれるインドが今後大きく発展するためには、ソフトウェア産業だけに偏らない産業の育成が欠かせないでしょう。


3.インド人とのプロジェクトの進め方


今回一緒に仕事をしてみて、やはり一番困るのは言葉の問題です。


日本人に言われる筋合いではないと叱られそうですが、インドは地方によって英語教育の方法が大きく異なっており、英語のなまりの強弱にかなりの差があると言うことです。小学校から学校の授業を英語だけで受けている地域もあれば、地方の言葉でずっと授業を受けてきた地域もあるそうです。その地方語の種類がたくさんあることで、英語のなまりにもバリエーションがたくさんあるようです。


ドイツ語なまりの英語だとか、フランス語なまりの英語なら一定の傾向があるのですが、ヒンディー語なまりの英語だけでないところが、英語でのコミュニケーションを困難にしています。またやたら早口の人が多いですから、インドの人と話す時はかなり集中して聞かなければなりません。


数ヶ月前の日経ビジネスの記事に、インドはコミュニケーションが中国に較べて問題になることが多いと書かれていました。インドには英語を母語とする人が多いのは確かですが、それによってインドが欧米と結びつきやすいことはあっても、日本とのコミュニケーションには有利になるわけではありません。


また、同じアジアだと言っても3時間半の時差は、コミュニケーションの障害になります。ですから、毎日のように電話やメールで情報のやり取りをする仕事の進め方には、向いていないと思います。もしそれが開発の仕事なら、予め完璧な仕様書を英語で準備し、あとはそれに従ってスケジュール管理だけを行う事に集中することが必要です。


仕様がはっきり決まっていない場合や、頻繁に仕様が変更される場合などは、インドとの協業は困難さを増すでしょう。今回の失敗したケースが正にこれに当たります。仕様がいつまでも大きくぶれ続けていましたから、それだけコミュニケーションに負担が掛かり、本来の開発作業に支障を来していたのです。


4.これからのインド


今、日本のサッカー代表チームが、インドとの試合の為にバンガロールに遠征に行っています。練習風景がテレビのニュースで中継されていましたが、競技場の周りの風景は、いかにもバンガロールらしい感じがしています。


決して立派な競技場には見えません。外国のテレビに映るところだけを繕ったりしないところが、インドらしいと思います。


日本では年配になってくると、塩分の取り過ぎから高血圧などを気にかける事が多いのですが、インドでは辛い香辛料の取り過ぎを心配するそうです。


先ほどインドは若い国だと書きましたが、確かに日本人に較べ平均寿命が20年も短いそうです。おそらくそれは香辛料の問題ばかりでなく、感染症の宝庫と言われるほど様々な病気が流行する事も原因と考えられますが、根本的な原因は、やはり平均国民所得が低いことなのでしょう。


ソフトウェア産業をきっかけとしてBRICsの中からインドが抜け出すことが出来るかどうか、これからもこの国を注目していきたいと思います。