さて、何と言っても一日で一番困る(実は面白い)のが昼食の時間です。工場にある食堂に2人を連れて行くのですが、メニューを選ぶのに一苦労です。
外国の人に食事を勧める場合に気を付けなければならないのは、食べては行けないものが含まれているかどうかと、とんでもなくまずいものを食べさせてしまうことです。
メニューが写真で表示されているのですが、料理名が日本語でしか書かれていませんから、一通り説明をしながら食べられそうなものを勧めることになります。インドの方は肉を食べないですから、例えミンチであっても入っているメニューを勧めることは厳禁です。
一日目。写真を見て馴染みがあると思ったのでしょう、男性のHさんがカレーライスを指さして「これがいい!」と言いました。ただ、これはビーフカレーだからビーフが入っていると言うと、首を横に振って「それは駄目だ」と言います。
チキンや魚は問題ないと言うのですが、鮭の塩焼きや鯖の味噌煮には見向きもしません。タンドリーチキンなら食べられそうだと言うことで、3人で同じ定食メニューを選びました。
タンドリーチキンはカレー味のソースが掛かっていて、女性のPさんは味もOKとのこと。ただし付け合わせのインゲン豆はお口に合わないご様子です。みそ汁も味がよく分からないというか、得体が知れないといった感じです。ちなみにご飯が一番まずかったようで、ネットリした日本のご飯は大苦手のようです。
その日はタンドリーチキンという、如何にもインドの人に合わせたようなメニューがあってほっとしました。聞いてみると、行きの飛行機ではベジタリアンメニューを予約してきたそうで、チキンも普段はそれ程食べるわけではないそうです。
さて次の日、メニューを見回して食べられそうなのはやはりチキンしかありません。しかし、今回はチキンの照り焼き(醤油味)が乗ったどんぶりです。少し危険かなと思いながら列に並んだのですが、時間が遅かったせいかすでに売り切れていて、残っているのはビーフの挽肉の入ったコロッケか、ビーフカレーしかありません。
どうしたものかと、とりあえずカレーがビーフカレーかどうかを食堂の係りの人に確認してみると、やはりビーフカレーです。実はビーフは食べられないのですと説明して思案していると、係りの人が言いました。「ビーフカレーと言ってもビーフはほとんど入っていませんよ!」
うーん、自慢してはいけないような気がするのですが。インド人たちにビーフはほとんど入っていないと言うと、それなら仕方がないと言って、3人でビーフカレーを頂いたのでした。
カレーライスは彼らにとって、一番味のリスクがないのでしょう。辛さが弱いと文句を言いながらも完食していました。確かに肉らしきものは見当たりませんでしたね。良いのだか悪いのだか???
ただせっかく日本に来たのだから、日本にしかないものも食べてもらいたいものです。肉が駄目な人でも豆腐から作ったものなら安心して勧められるので、小鉢に入った「がんもどき」はどうかと促してみます。
以前ドイツ人に豆腐を食べさせて、日本食の中で一番まずいと言われたことがありましたが、その時は味が全くないのが理由でした。
がんもどきの見た目に少し不安を感じていた様子でしたが、食べてみて結構気に入ったようでした。今回は豆腐と言っても手を加えたものでしたが、がんもどきを少しでも気に入ってもらえたのはうれしかったですね。
昨日の夜、晩御飯に何を食べたのかを聞いてみると、ホテルのレストランで中華のフライドライスを食べておいしかったと、うれしそうな顔で言っていました。
日本で無難な食べ物を探すのも、なかなか大変そうでした。