昔から、美しい風景は逆さまにしてみると、またひときわ美しさが引き立つと言われています。有名なところでは、富士五湖に逆さまに映る逆さ富士とか、天橋立の股覗きをあげる事ができます。
逆さ富士にはいろいろなバージョンがありますが、その中でも一番美しいとされるのは本栖湖に映る富士山ではないでしょうか。五千円札の絵にも採用された姿は、風情ある日本的な風景の代表と言えるでしょう。
天橋立は、股から覗き込むことによって天地が逆になり、松並木が空中に浮かび上がった橋げたに見えるところから、天に架かる橋と呼ばれたそうです。(今更言うほどの事ではありませんが。)
海外にも美しい景色を逆さまにして見るポイントがいくつかあります。例えば、スイス・アルプスの逆さマッターホルンは、最も美しい風景の一つではないでしょうか。
夏のマッターホルン見物のハイライトになっており、リッフェルゼー湖などに映るマッターホルンには、山の美しい姿をさらに引き立てる効果があるようです。
またUSのヨセミテ国立公園では、氷河によって山の半分が削り取られたハーフドームと呼ばれる山が、訪れる人を魅了しています。
このハーフドームが湖に映る姿は、多くのフォトグラファーによって絶好のカメラアングルを提供してきました。湖面に映し出される山の姿は、一度は見てみたいものです。
さて、逆さにすると美しさがひときわ冴えることが多いのは確かですが、何でも逆さにすれば良いと言うものではありません!
リクルートが発行している旅行雑誌の最新号、「ABROAD 5月号」の表紙の写真は、世界遺産の特集記事を組んでいる事もあり、モン・サン・ミッシェルが採用されていますが、なんとこの写真が左右逆なのです!
最初、この雑誌が掲載された電車のつり革広告を見ていて、違和感があったのでどうしてかなと思っていたのですが、良く見ると参道の向きが逆になっているのです。観光バス用の駐車場も向かって左にあるはずなのに右にありますし、私が泊まったホテルも門を入って右のはずが左になっています。
世界遺産を紹介している本文にもモン・サン・ミッシェルの写真が使われていますが、こちらは正しい向きになっています。よりによって表紙の方を間違えてしまったようです。是非皆さんも本屋でお確かめください。
しかし、誰か編集作業中に気付かなかったのでしょうか?旅心のある旅行雑誌の編集者たちなら、少なくとも何か変だと感じなかったのでしょうか?
ところで、この雑誌の表紙を見ていて気付くのは、モン・サン・ミッシェルの周りの海が干上がって来ていると言うことです。
このあたりの海は、干潮時と満潮時の水位の差が激しく、駐車場が水没することがあるほどですが、自動車が通れる橋ができた影響で潮の流れが悪くなり、近年砂の堆積が増えてきたそうです。
このままでは、近い将来完全に陸続きとなってしまうため、橋を取り除く計画があるそうです。そうなると、すべての観光客は陸側にある駐車場で車を停め、徒歩で観光しなければならないそうです。
世界遺産を守っていくのは、容易い事ではなさそうです。
338.逆さモン・サン・ミッシェル(続き) (2004/04/29)
332.逆さモン・サン・ミッシェルの雑記で、旅行雑誌「ABROAD」…