(今回の内容は、アマチュア無線や電波に興味のない人には全く面白くないと思われますので、予めお断り申し上げます。)
さて、先日の“224.「たけやぶやけた」”で、オープンリールのテープレコーダーを使って逆再生の実験をしていたと言う話を致しましたが、今日の話もテープレコーダーを使った内容です。無線に興味のある方には、なかなか面白い話のはずです(たぶん)。
アマチュア無線は、空中線電力に制限がありますから、限られた出力で遠くに電波を飛ばすために工夫をします。そのひとつにSSB(Single Side Band:単側波帯)があります。振幅変調の電話(音声)通信をする方式のひとつです。
振幅変調は、入力によって電波の振幅を変化させ信号を伝えます。周波数変調(FM)に比べ、帯域を狭くすることができるので、主に短波帯までの低い周波数で使われます。
電波の波を三角関数で表現し、その振幅の項を入力波形で変調を掛けると、キャリアと呼ばれる搬送波と、信号情報を含む2つの側波帯が生成されます。
送信電力を有効利用するため、復調時に注入できる搬送波は削除し、2つの側波帯は同じ情報を含むため上側(Upper
Side Band:USB)か下側(Lower Side Band:LSB)のいずれかだけを送信します。信号の伝達に必要な電波だけを送信することによって、限られた電力でできるだけ遠くに届くようにしています。
USBとLSBは、互換性がありません。その為、周波数帯ごとにUSBを使うかLSBを使うかルールが設けられており、そのルールに従って送信と受信は同じ側波帯を使うことになっています。
私が高校生だったある日、交信仲間と実験をしようと言うことになりました。
USBで送信された電波をLSBで受信すると正しく復調されず、「モガモガ」とした音声しか聞こえません。それをわざとUSBで送信したものをLSBで受信し、一旦テープレコーダーに録音してから、再度LSBで送信しUSBで受信するのです。
当然途中の録音された音声は、全く何を言っているのか分かりません。ところが再度送った信号を逆の側で復調を掛けると、何と正しく再生されたのです!
振幅変調は搬送波を中心にして対称に側波帯が発生しますから、逆の側で復調すると高低の周波数が逆になります。しかし、再度逆に変復調を掛けることによって元に戻るのです。アナログ的な音声信号の暗号化と言ったところでしょうか。
振幅変調の原理が分かっている人にとっては当たり前の事なのですが、このような馬鹿らしいことを、夜中に真剣に「ああでもない、こうでもない」と実験しながら、議論に熱中していたことを懐かしく思い出しました。