163.百マス計算と入学試験 (2003/08/05)

計算力が、基本的な学力として重要であると言う事に対して、それが全てではないにしても、重要である事は間違いないでしょう。昔から「読み・書き・そろばん」と言われてきました。


特に、計算は個人的な能力の差はあるにしても、やればやっただけ力が付きますから、学習して上達する喜びを感じたり、学習の習慣を付けさせたりするのに、都合が良いようです。


確かに、最初に考案された先生は、計算力の向上の目的ではなく、むしろ特定の生徒に学習の習慣を付けさせる為に利用されていたようです。もし、世間で言われているように、大学受験における学力の向上が認められたとすれば、計算力の向上によるものではなく、学習の習慣を付ける事学習に喜びを感じる事が大きいのではないかと思うのです。


ところで、計算ドリルと称して、計算をいやと言うほどやらされた思い出は、誰にでもあると思います。計算の練習をするだけなら、別に百マス計算が特別優れているとは思えません。特に、1列に渡り同じ数字に対する計算をすることは、ランダムな組み合わせの計算より楽にできますから、練習としても良いとは思えません。


では、百マス計算の利点は何かと言うと、先生が楽なのです。例えば、2×3のような計算問題を100個作るには、数字を200個と演算子を100個書かなければなりません(=は生徒が書くとして)。ところが、百マス計算なら、数字を20個と演算子を1個で良いのです。どう考えても、作る側に立ったデザインであると言えるでしょう。


百マス計算を実際やってみると、右下の方になってくると、多くの数が用紙全面にひしめき合い、その中をどの数字とどの数字を次の計算で使うかを、目を上下左右に動かして捜さなければなりません。視力が低下するのではないかと思います。


もちろん先生の負担を軽減して、その結果多くの練習問題を無理なくこなす事ができるのなら、それはそれで良いのですが、表計算ソフトで全ての問題を丁寧に作るほうが、私は良い様に思います。また、答え合わせを効率よくやる方法を考えられている先生もおられるように、いろいろな方法が可能な訳ですから、百マス計算のこだわらずにどんどん新しい知恵を出して、すばらしい学習方法を開発して頂きたい物です。


ある、関西の有名私立中学校の入学試験に、次のような問題が出題されました。


いま、3つの正方形があり、それぞれ1辺が13センチメートル、12センチメートル、1センチメートルである。これら3つの正方形の面積の合計と等しい面積を持つ、円の半径を求めよ。ただし、円周率は3.14を使う事。


何か面白い結果が出てくるのではないかと期待させるような問題ですが、出てきた答えは採点を楽にする事しか考えられていない様に思います。もっと何か算数とか計算の持つ楽しさ不思議さを表現した愛情のこもった入学試験問題を考える事はできないのでしょうか?