320.鳥インフルエンザ (2004/03/05)

鳥インフルエンザが猛威を振るい、自衛隊が出動するほどの事態になってきています。スーパーからは鶏肉と卵が消えていき、来週から地元の小学校の給食のメニューが変わります。


養鶏場の近くで、死んだカラス死にかかったカラスが発見されたそうですが、野生の鳥の間でウィルスの伝染が起こっているとなると、人間が目に見える範囲を消毒しているだけでは全く無意味なのかもしれません。


もし、病気の媒介をするものにある程度の大きさがあり、その移動を制限すれば拡散を防ぐことが出来るのならば、制限区域内にとどめることが出来るのでしょうが、鳥の糞が乾燥して空気中に舞い上がるようなことがあると、今の対処ではどうすることもできません。


これを聞いて思い出すのが、ダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレイク」です。患者を隔離しているはずなのに、どんどんと他の人に伝染していく時、ダスティン・ホフマンは部屋の天井を見上げ、換気口から全ての部屋に蔓延しているのに気付くのです。


また、スティーブン・セガール主演の「沈黙の陰謀」 (The Patriot)にも、同様な場面がありました。いずれの映画でも、最後にはワクチンの開発が成功し一件落着するのですが、どちらの映画もワクチンは偶然発見されたのでした。


ハクビシンが疑われているSARSも、動物から人に移ることがあると言う意味では鳥インフルエンザと似た病気ですが、食材としてのハクビシンは日本人には関係がありませんでしたが、ニワトリとなれば三大食肉の一つですから、食生活に与える影響は甚大です。既に牛肉はBSEで問題になっていますし、食肉産業に根本的な改革が必要になって来ているのかもしれません。


思えばO175の時に、カイワレ大根を葬り去って一件落着したかに見えたのですが、最近の裁判の判決では、問題とされたカイワレ業者の施設からO157が最後まで検出されなかった等を根拠に、国側の敗訴が言い渡されています。


もし、裁判の結果が正しいとするならば、O157の根本原因は全く分かっていなかったと言うことになります。今回の鳥インフルエンザの騒動は、O157の経験が生かせていないと言うより、O157ではまともな対策を打てずに曖昧なまま放置してきたつけが回ってきたと言えるでしょう。


今の鳥インフルエンザに関して言えば、感染経路も全く分かっておらず、対策と言っても手当たり次第消毒をして回っているだけで、自然と収まるのを待っているだけに見えます。


O157の時の轍を二度と踏まないように、日本の総力を挙げて取り組んで貰いたいものです。

321.早い春と食物連鎖 (2004/03/05)

日経サイエンスの最新号に、「早まる春 崩れる生き物たちのリズム」と言う記事が掲載されています。地球の温暖化によってどのような変化が始まっているかを検証しています。


オランダ南東部のデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園のシジュウカラ産卵時期は、20年前とほとんど変わっていないそうです。ところがこの地域の春の気温は、平均で2℃上昇しているそうです。


その結果、雛がかえったときの餌になる蛾の幼虫には温暖化の影響が見られ、20年間で2週間も早く孵化するようになったそうです。以前は雛が最も餌を必要とする時期と蛾の幼虫の孵化の時期が一致していたそうですが、シジュウカラの雛が生まれて餌を最も必要とする時期に、既に幼虫のピークは過ぎてしまっているのです。


地球の温暖化によって、それまで一定のリズムを守ってきた食物連鎖において、ズレが生じ始めていると警告しています。


さらにこの研究では、蛾の幼虫の餌であるナラの木の柔らかい若葉の関係も調査をしています。ナラの芽吹きと幼虫の孵化がほぼ同時に起こらなければ、幼虫は餓死してしまうそうです。芽吹きより早くかえった幼虫が餌にありつけないだけでなく、芽吹きから2週間たつと葉がタンニンを含むようになり、やはり食べることが出来ないそうです。


ナラの芽吹きがこの20年間で10日早まり、幼虫の孵化は15日早まっているそうです。この結果、この蛾の幼虫の数が減ってきているそうです。幼虫が雛の餌になるシジュウカラの絶対数が減少傾向に向かうのは、時間の問題だとしています。


さて、問題はオランダのシジュウカラが絶滅する可能性があると言うことだけではなく、地球上であらゆる食物連鎖が崩れてきている(これを断絶と表現している)可能性があると言うことです。


地球上の生物が生存して行く為には、その生物に必要な環境が満たされることが必要であるだけでなく、その食物となる生物にとっての環境も重要であると言うことですから、ほんの少しの気候の変化が生態系に及ぼす影響には計り知れないものがあるようです。


地球は本当に「ガラス」で出来ているのかもしれません。