384 文化資産と保管コスト (2004/09/22)

asahi.comに「昔のCM10万本、廃棄の危機 保管コストかさむ」と言うニュースが掲載されています。1985年以前のCMの原版のほとんどが捨てられる運命にあるそうです。


1985年までに製作されたCMの総数は30万から40万本あり、そのうち現在でもフィルムやビデオで保管されているのが約10万本あるそうです。


ところが保管コストがかさみ、なおかつ視聴が困難になってきているため、廃棄処分が始まっているそうです。


古いメディアで作られたCMを保管するとしても、良い状態で保管するには温度・湿度管理が十分になされていなければなりません。また、再生するための装置をメインテナンスし続けなければならず、旧式の装置を常に動作する状態にしておくのは容易ではありません。


そこで、デジタル化して情報を新しいメディアに移し替えるのですが、コストがかかるため全てのCMをデジタル化するわけにはいかないようです。


古いテレビCMを見ると、当時の生活を偲ばせるものが少なくありません。また、その時代の新製品は人々の憧れでもありましたから、人々の嗜好や生活の水準を推し量る事のできる重要な資料に違いありません。


「タイムマシン」と言う映画で、主人公は未来の図書館の本棚が、ほこりの塊と化した朽ち果てた書物で埋め尽くされているのを見て嘆きます。人類の英知が継承されなかったために、未来の人類は他の動物と同じような野性的な営みに戻ってしまっているのです。


CMのフィルムやビデオを保管コストが高いからと言って廃棄することは、ほこりと化した書物と何ら変わりません。


全てのCMをデジタル・アーカイブとして保存するのは無理でも、博物館などで視聴出来るように今編集しておかなければ、貴重な文化資産を失うことになるでしょう。一刻も早い対応が望まれるところです。

371.アテネオリンピック (2004/08/15)

直前に工事の遅れで、開催延期と言われるのではないかと心配さえされていたアテネオリンピックも、始まってみれば大きな混乱もなく、次々と競技の結果がニュースとなって飛び込んで来ています。


スケジュールが遅れていても、最後は何とかつじつまを合わせるのがギリシャ人気質なのでしょうか?ギリシャの人たちに対する認識がひとつ増えました。と言うか、これまでギリシャ人がどのような人たちか、あまり知りませんでした。


開会式で日本の選手団の入場に対して会場の歓声があまり上がらなかった事を、中継の解説の方が残念がっておられましたが、私達がギリシャ人をあまり知らないのと同じように、彼らも日本人を知らないのかも知れません。


選手団の規模の割に異常と言えるほど歓声が少なかったのは、そのまま国際社会での日本の存在の大きさを表しているようです。


日本の選手団と言えば、1964年の東京オリンピックでは赤と白の揃いのスーツに全員が身を包み、一糸乱れず歩調を揃えて行進し、一斉に全員が帽子を取って観客に敬礼の如く挨拶をしましたが、今から思えば異様な光景でした。


そしてそれを見た私達は、「日本の選手団の行進はすばらしい! 日本人は几帳面で優秀な国民だ!」、と思い込んでいたのですから、少し勘違いがあったかも知れません。


アテネからは早速金メダル獲得のニュースが入ってきていますが、今のところ団体競技よりも個人種目の方が成績がよろしいようです。見ている側は勝手なものですぐにメダルを期待してしまいますが、実力を出し切れずに敗退する選手がいたり、反対に実力以上のものを発揮して好成績を残す選手がいたりして、様々なドラマが生まれるようです。いずれにしても選手の方々には、思いっきりやって来てもらいたいものです。


アテネオリンピックに限らず高校野球も甲子園球場が満員になるほどの人気ですし、プロ野球もペナントレース以外では注目を集めています。今年は例年になく暑い夏ですが、過熱するスポーツでさらに残暑が厳しくなりそうです。

364.百万人の打ち水 (2004/07/23)

暑い日が続いていますが、最近は夕方頃から少し風が吹くようになりしのぎやすくなって参りました。パソコンルーム兼物置でサイトの更新をしております関係上、暑すぎる日にはパソコンの電源を入れることさえ苦痛になります。特にCRT式のディスプレーは暑さに悲鳴を上げて、時々内部で火花を散らしております(冗談ではなく本当に)。


さて、東京では「打ち水大作戦」と称しまして、毎年夏の間、一斉に打ち水をして気温を下げ、風を起こそうと言う運動があります。


昨年は、34万人の方が参加されたそうで、実際に東京の気温を1度下げることが出来たとされています。今年は、100万人の参加で気温を2度下げる事を目標とされているそうです。


打ち水を江戸の風習として見直し、ヒートアイランド効果で上昇中の都会の気温を、少しでも下げる運動を広げようとしています。


大阪でも「御堂筋打ち水大作戦2004」が、8月18日正午に計画されています。ここでも2度気温を下げることが目標になっています。大阪は、以前から東京よりヒートアイランド現象が顕著であるとされていますから、その効果が期待されます。


エアコンは温度を下げるものと思っていますが、実際は部屋の熱を部屋の外に移動しているだけですから、決してトータルでは温度を下げる訳ではなく、逆にモーターを運転する事によって冷媒に与えられたエネルギーは、余分な熱エネルギーとなって大気中に放出されます。消費した電力分の熱エネルギーが、夏の暑さに拍車をかけることになります。


きつい冷房は体に悪いからと言って、部屋を閉め切らずに外気を入れながら冷房をかける人がいます。自然の空気に触れていないと健康に悪いと言う理屈です。


それなら冷房を切るべきです。部屋の温度がいつまで経っても下がらないので、エアコンがフル稼働するため必要以上に電気を浪費します。スピードが出ると怖いからと言ってアクセルとブレーキを一緒に踏んでいるドライバーと同じで、エネルギーの無駄遣いになります。


打ち水にも夏場の貴重な水を使うのではなく、洗濯のすすぎ水や風呂の残り湯などを使うように呼びかけています


東京では一斉に打ち水をする日が決められていて、8月18日(水)正午8月25日(水)正午に予定されています。1人当たり1リットルの水を蒔くと、百万人で行えば2度気温が下がると予想しているようですが、果たして今年の結果はどうなるでしょう?


あまりに多くの水蒸気が発生して、局地的に夕立が降ったりしないかと心配になってきますが、人がジャンプして地震を起こす運動よりは役に立ちそうです。


ただ、打ち水をして気温が下がって風が吹き始めたら、エアコンを止めることをお忘れなく。そよ風の吹く街を、浴衣を着て夕涼みに出かけると言うのも、これまた情緒があってよろしいのではないでしょうか。

329.回転ドア休止中 (2004/04/04)

六本木ヒルズの事故により、全国的に自動回転ドアが休止しています。そう言えば大阪の梅田界隈でも、意外と多くの自動回転ドアがあるようです。今は警備員が横に立ち、使用を止めた自動回転ドアの横の狭いドアを、通行人がすり抜けていきます。


回転ドアと言えば一番古くに思い出すのは、大阪万博アメリカ館でした。内部の気圧を高めたドーム構造から空気が逃げるのを防ぐ為、かなり気密性の高いドアでした。ドアを通過する時、気圧が急激に変化するため、耳が痛くなったのを覚えています。高気密性が要求される場合は、回転式ドアはなくてはならない物のようです。


回転式のドアはUSにも以前から多くあります。ホテルの入り口にこれがあると、ごろごろ引っ張るトランクを持って入ってしまうと、立ち往生する事がしばしばあります。大きな荷物があるときは、できるだけ横の通常のドアを使うのが無難なようです。


手で押すタイプの回転ドアは結構重いことが多く、同時にドアを押している人の体力によっては、かなりの重さを感じることがあります。逆に力一杯押す人がいると、はじけ飛ばされてしまいます。自動回転ドアは、このような欠点を補うために増えてきたのでしょう。


回転ドアの難しさは回転速度もさることながら、ドアから出てくる人と入っていく人が速やかにそれぞれの行くべき場所に移動しなければならないところです。極端な例で言えば、ある人がドアから出るべきなのにそのまま回り続けるようなことをすると、秩序が乱れてしまい危険です。


これは、エスカレータースキー場のリフトなどと似ています。スキー場のリフトは初心者には難しい物です。ただでさえ歩行に苦労するスキーを引きずっているのですから、リフトに乗る前にばったり倒れてしまう事は、珍しいことではありません。必ず係員が側にいて、非常時は運転を緊急停止させるようにしています。


またエスカレーターも以前は子どもの事故が多く、係りの人が必ず側に立っていたものです。今でも、混雑しているとき、エスカレーターを降りた人が速やかに進めない場合、後からどんどん人が溢れてきて危険を感じることがあります。利用者が危険に対する認識を持っていることが必要になります。


さすがに最近では、エスカレーターに乗るときに、躊躇してタイミングを計って乗っている人を見ることはなくなりましたが、自動回転ドアの場合は、飛び込むタイミングを計っているいる人も多いのではないでしょうか?


今回の事故ではドアの自重が重いため、緊急停止してもドアが完全に静止するまでに時間がかかった事が指摘されています。しかし、自動回転ドアを瞬時に止めると、逆に頭をぶつけたりする危険性もありますから、ただ止めればよいと言う訳ではありません。


瞬時に止めることが困難ならば、挟み込んでしまう可能性がある部分だけでも、力が加われば外れてしまう等の対策がされているべきでしょう。


自動回転ドアの利点を生かすためにも、挟まらない形状を工夫するなど、安全性を高めて安心して誰でも利用できるようにしてもらいたいものです。

320.鳥インフルエンザ (2004/03/05)

鳥インフルエンザが猛威を振るい、自衛隊が出動するほどの事態になってきています。スーパーからは鶏肉と卵が消えていき、来週から地元の小学校の給食のメニューが変わります。


養鶏場の近くで、死んだカラス死にかかったカラスが発見されたそうですが、野生の鳥の間でウィルスの伝染が起こっているとなると、人間が目に見える範囲を消毒しているだけでは全く無意味なのかもしれません。


もし、病気の媒介をするものにある程度の大きさがあり、その移動を制限すれば拡散を防ぐことが出来るのならば、制限区域内にとどめることが出来るのでしょうが、鳥の糞が乾燥して空気中に舞い上がるようなことがあると、今の対処ではどうすることもできません。


これを聞いて思い出すのが、ダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレイク」です。患者を隔離しているはずなのに、どんどんと他の人に伝染していく時、ダスティン・ホフマンは部屋の天井を見上げ、換気口から全ての部屋に蔓延しているのに気付くのです。


また、スティーブン・セガール主演の「沈黙の陰謀」 (The Patriot)にも、同様な場面がありました。いずれの映画でも、最後にはワクチンの開発が成功し一件落着するのですが、どちらの映画もワクチンは偶然発見されたのでした。


ハクビシンが疑われているSARSも、動物から人に移ることがあると言う意味では鳥インフルエンザと似た病気ですが、食材としてのハクビシンは日本人には関係がありませんでしたが、ニワトリとなれば三大食肉の一つですから、食生活に与える影響は甚大です。既に牛肉はBSEで問題になっていますし、食肉産業に根本的な改革が必要になって来ているのかもしれません。


思えばO175の時に、カイワレ大根を葬り去って一件落着したかに見えたのですが、最近の裁判の判決では、問題とされたカイワレ業者の施設からO157が最後まで検出されなかった等を根拠に、国側の敗訴が言い渡されています。


もし、裁判の結果が正しいとするならば、O157の根本原因は全く分かっていなかったと言うことになります。今回の鳥インフルエンザの騒動は、O157の経験が生かせていないと言うより、O157ではまともな対策を打てずに曖昧なまま放置してきたつけが回ってきたと言えるでしょう。


今の鳥インフルエンザに関して言えば、感染経路も全く分かっておらず、対策と言っても手当たり次第消毒をして回っているだけで、自然と収まるのを待っているだけに見えます。


O157の時の轍を二度と踏まないように、日本の総力を挙げて取り組んで貰いたいものです。