430.パームが甦る日4: 手帳のソフトウェア (2004/12/14)

では、最近の手帳にはどのようなものがあるのか、あまり特殊な手帳は一般的ではありませんから、いつも立ち寄る本屋で調査してみましょう。(他に手帳売っているところ知らんのかいな!)


「能率手帳」の横には「生産性手帳」なるものが並んでおり、その横には「手帳の高橋」なるブランドもあります。小型のポケットサイズのものが主流のようです。


手で抱える大きなサイズのものもありますが、どちらかと言えば日記として使うものや、ノートのように記述量が多くなる用途のものになり、手帳の中では特殊なものと言えるでしょう。


いろいろな手帳の中を開いて比べて見ると、それほどびっくりするような違いがあるわけではありません。手帳のメインコンテンツと言えるのは、スケジュールメモ用紙、そして住所録は別冊になっていることが多いようです。それぞれに少しずつ違いがあるのですが、この微妙な違いが実際の使い心地を大きく左右するのでしょう。


まず1年間を見渡せるカレンダーが当年分と1、2年先まであり、その後スケジュール欄が続きます。スケジュール欄には、見開きで1ヶ月分を表示したものが最初にあり、次に1週間ずつ見開きになったページが続きます。


1ヶ月ごとのスケジュール欄は1日単位の予定を、1週間ずつのスケジュール欄は時間を指定した予定を書き込むのがオーソドックスな使い方なのでしょう。。


スケジュール欄が終わると、次にメモ用紙があります。中にはメモ用紙が切り離せるようになったものや、色分けされたものなどがあるようです。基本的には使う人の自由に任せているのでしょう。


メモ用紙の後は、リファレンスとして料金表や年齢早見表、地下鉄マップなどがあり、最後は別冊になった住所録が挟まっています。住所録には、全ての項目を記載するページと、電話番号やメールアドレスだけを簡単にリストできるページが、分けられているものもあります。


手帳のバリエーションとしては、やはりスケジュール欄にこだわりがあるようで、週始めが日曜日のものと月曜日のもの、週ごとのスケジュールにメモ帳をプラスしたもの、平日の欄が大きいもの(仕事好き用)と土日の欄が大きいもの(遊び好き用、とは限りませんが)などなど。


些細な違いと言えなくはないですが、その違いが重要だからこそ、何十と言う種類の手帳がこうやって並べられているのでしょう。さらに装丁が皮革風になったりパステルカラーになったりと、デザイン面でのバリエーションも豊富です。


その割には昔から取りざたされた、筆記具の収まりがおざなりにされたままになっているのは、いいアイデアがなかったからでしょうか?またToDoに対する明確な方向性も見つけられなかったのでしょう。「メモ用紙でお好きなように」と投げやりと見ました。


いくつかの手帳を見ているとそれほど進化しているとは思えず、過去にいろいろな改良を試みてきたけれど、結局奇をてらったものよりもオーソドックスな形式の方が使いやすかったと言うところでしょうか。手帳の欠点は、使う人それぞれが工夫を凝らして対応していることが伺われます。


このことは、PDAの機能を考える上で参考になります。すなわち、手帳を凌駕するPDAを作るためには、手帳の機能を真似しているだけではダメで、手帳を使う人それぞれの使い方まで含めて凌駕しなければならないと言うことになります。


これまでのように、手帳よりパームの方が機能が優れていると考えているうちは、決してトータルとして手帳を越えることはできないでしょう。それでは、単にハードウエアとしての優位性しか考慮していないからです。


つまり手帳の機能は、紙の手帳というハードウェアと、使い方の工夫ノウハウというソフトウェアを、総合したものとして捉えなければならないのです。


ここにパームを始めとするPDAが、手帳をこれまで超えることができなかった理由があるのではないでしょうか?

427.パームが甦る日3: 手帳にも弱みがある (2004/12/12)

前回ご紹介した「能率手帳」が、55年間も継続して販売されてきたと言うのは、さすがに歴史の重みを感じます。長年の間に改良を重ねてきたでしょうから、紙の手帳は既に完成したものになっていると言えるでしょう。


実は私もパームを使い始めるまでは、20年以上手帳を愛用しておりました。(相当じじいだな!)


会社で毎年支給されていた一般的な手帳から、ダイヤリー形式の大判のものまで、あるいはシステム手帳も使ったことがありました。最終的には大判のものは携帯に不便ですから、やはり小型のポケットサイズのものを愛用しておりました。


手帳を使う目的にはいろいろありますし、手帳の使い方も人それぞれで異なっていると思います。同じ手帳を使う人が二人いたとしても、その使い方が同じであることはほとんどないでしょう。手帳の使い方には使う人ごとのスタイルがあります。手帳ほど使う人の個性がはっきり表れるものは、他にないかも知れません。


私も試行錯誤しながら、「来年の手帳は使い方をこのように変えていこう」などと考えながら、自分なりに工夫したものです。


しかし、20年間使った経験から、紙の手帳にはどうしても使い方の工夫だけではカバーできない部分があると感じました。如何に長年の間改良を重ねてきた手帳と言えども、使っている内に歯がゆさを感じる事があったのです。


ひとつには、一時的に控えておきたい情報を簡単に消せないと言うことです。例えばToDoのような使い方がありましょう。手帳の中には、メモ用紙の部分をミシン線から切り離すことが出来るようになったものがありますが、それでも十分ではありません。


解決するためには、手帳と使い捨てのメモ用紙を併用するしかありません。手帳からパームに移った場合でも、hanchanさんのコメントにもありますようにメモ用紙をパームと併用している方がいらっしゃいますから、メモ用紙はいずれにしても必ず必要になりそうです。


メモには、一日や二日の覚え書きから数年間に渡って記憶しておかなければならないものもあります。数日から1ヶ月単位で情報を扱うことが多いスケジュールや、長い間参照することになる住所録に比べると、情報の賞味期限にばらつきがあります。


手帳やパームはオーガナイザーと呼ばれますが、メモ用紙はオーガナイズされないものなのかも知れません。もしメモ用紙をうまくオーガナイザーの一部として取り込む事ができれば、手帳を進歩させるヒントになるかも知れません。


ToDoは、手帳でもなかなかうまく解決できないものではないでしょうか。そもそも手帳の中に最初からToDoのためのページがあるものは多くはありません。期限や優先順位によって順番が入れ替わることもしばしばですし、手帳の弱点のひとつと言えるでしょう。


もちろんToDoのアイテムが少なければ可能でしょうが、ToDoを紙の手帳で管理するのにすっきりと美しくする方法はなさそうです。しかも、人によってはToDoが一番大切であったりしますから、手帳を使い込んでいる人の悩みの種になっているのではないでしょうか。


手帳の弱点を一言で言うならば、「一度書いたら簡単には消せない」と言うことになるでしょうか。


別の言い方をすれば、編集・更新がきれいに出来ない、つまり情報のメインテナンスが容易でないと言うことになります。


その結果、長い間使い込まれた手帳には新しい情報と古い情報が入り乱れ、後から必要な情報を容易に取り出すことが出来なくなってしまうのです。パソコンで例えればデフラグをする前のディスクの状態のようなものですから、必要な情報にアクセスするのに無駄な時間を費やす事になります。


これでは長い間に手帳に書き込まれて蓄積した情報を、有効に活用することが難しくなります。


では、今書店などで売られている手帳にはどのようなものがあるのかを、次回は見て行くことにしましょう。

424.パームが甦る日2: 手帳愛用者 (2004/12/08)

少し前から気になっていたのですが、帰りの電車の駅にある本屋に来年の手帳が並ぶようになって、1ヵ月半近く経ちました。


当初はほとんどお客さんがその前を素通りしていたので、手帳も最近はあまり売れていないのかと思っていたのですが、今月に入ってからは日増しに手帳を眺めるお客さんが増え、今週あたりからは常に何人かのお客さんが物色しています。


いったんパームを使い出した者から見れば原始的でさえある手帳ですが、手帳を使い慣れた者からすれば手放すことができないのでしょう。パームのPIMが便利だと いっても、長年愛用した手帳から乗り換えるには魅力が乏しいのかも知れません。


またパームを初めとするPDAが圧倒的に手帳に勝っているのかと言うと、どうもそうではなさそうに思えるのです。


昨日、帰りの電車の中に手帳の広告があることに気付きました。「能率手帳」で す。本屋に並べてあったあの手帳です。


その広告によると、1949年に発売されて以来55年間使い続けられており、現在では120種以上のラインアップによって毎年1000万冊を発行しているとの事。発行部数では信用できないと思って能率手帳のホームページを見てみると、販売が1000万冊であるとか書かれているではないですか!


能率手帳一ブランドだけで1000万冊なら、世の中の手帳全部をあわせると数千万冊になるに違いありません。PIM機能を持った携帯電話がこんなに普及していて
も、紙の手帳がそれとは別にこれほど利用され続けているのです。


これでは、携帯電話にPIM機能が搭載されたために、PDAが普及しなかったという理由は成り立ちません。PDAは手帳に勝てなかっただけなのです。


これらの手帳のユーザーにパームのすばらしさを積極的に紹介することができるならば、またパームが革新的なPIM機能を搭載して紙の手帳を凌駕することができるならば、全部とは行かないまでもかなりの手帳ユーザーを取り込むことができるのではないでしょうか?


ここで疑問を感じる方がいらっしゃるかもしれません。「パームは原始的な手帳に比べて便利なのは間違いないし、もう既に多くの手帳ユーザーがPDAに乗り変えて
いるはずだ」と。


それはその通りだと思います。一般的に電子化された機器が、それまでの方法に比べて進歩的であることはほぼ間違いないでしょう。


しかし、それが使いやすいかどうかと言う問題になると、使い慣れた手帳にはその人そ れぞれが培ったノウハウが秘められていて、意外と現在のパームのPIM機能では歯が立たないこともあるのではないかと思うのです。ひょっとして、今のパームは、手帳に出来ることをただ単に電子化しているだけなのかも知れません。


電子機器の好きな人には電子化するだけで十分魅力的に見えても、そうでない人にとってはただ面倒臭いものに見えるだけかもしれません。


では、これまで手帳を愛用してきた人にパームを魅力的に見せるには、どのようにしたら良いのでしょうか?

420.パームが甦る日1: 自滅したあの商品 (2004/12/03)

ついに日経産業新聞「あの商品は今」の記事として、パームが取り上げられてしまいました。「この商品」ではなくあの商品」です。


ワークパッドについて書かれている部分も多いので、過去の消え去った製品として対象になっているのはあくまでワークパッドであって、現行のパームやクリエの製品全体を指していないのかもしれません。


しかし、小型化されたノートパソコンや高機能化された携帯電話との競争に敗れたという話の流れからは、PDA全体が既に商品としての価値を失っているかのように書かれています。


ノートパソコンと電子手帳の中間的な存在として一時的に人気があったとされていますが、その役割を高機能化する携帯電話が徐々に奪っていったとしています。


元来通信機器である携帯電話が、メールやインターネットの機能をうまく取り込んで行ったのに対して、もともと通信手段を持たないPDAが苦戦をしたのは当然ですし、データ通信に適しているとされたPHSが携帯電話ほど普及しなかったことも、PDAにとっては不運でした。


また、高機能化した携帯電話がPIM機能を取り込むことによってPDAの市場を奪ったと言っていますが、携帯電話にとってPIM機能はおまけでしか過ぎず、電卓つきの携帯電話が電卓の市場を奪うことはないのと同様に、携帯電話の機能拡張がPDAの市場を奪ったとは言い切れないでしょう。


確かに携帯電話はモバイル機器の筆頭ですから影響が全くなかったとは言えません。ですからPIM機能を搭載した携帯電話に対抗して、携帯電話機能を搭載したTreoにはこれからもがんばってもらいたいのですが、それとは別にPDA本来の姿としてのPalmにも踏ん張ってもらいたいと思うのです。


と言うのも、パームが消えそうになっているのは携帯電話に負けたからではなく、パームが自滅したからではないかと考えているからです。


今年も年末に近づいて、去年と同じように来年の手帳が本屋で売られています。パーム売り場は衰退の一途をたどっていますが、紙の手帳の売り場にはほとんど変化がないように見えます。そればかりかある雑誌の最新号では、仕事での手帳の使いこなし方の特集を組んでいるぐらいです。


携帯電話のPIM機能をみんなが使っているのなら、手帳の市場も消えてなくなるはずですが、紙の手帳を持ち歩く人がいまだに大勢いらっしゃると言うことは、一体どういうことでしょうか?


「PDAは携帯電話に負けたのではなく、紙の手帳に勝てなかったのだ」と言うことではないでしょうか?


ここは原点に戻って、紙の手帳ともう一度真剣に勝負をする必要がありそうです。今回の特集は連続ではなく少し間を空けながらお届けしたいと思いますので、気長にお付き合いください。(ネタをこれから考えるのがバレました?)

406.バーチャル予約アンケート (2004/11/09)

Project Palmの機長さんが突然始められた、「バーチャル予約アンケート」。10日間だけの実施と言うことですが、是非多くの方に参加していただきたいと思います。


機長さんが、「Project Palm」と言う一冊の本にかけてこられた情熱がいわゆるパワーを生み、これまで様々な活動を行ってこられました。そしてその集大成として、出版にこぎ着けようとされているパッションに、敬服さえいたします。


人生長いと言っても、情熱を注ぐことが出来る場面はさほど多いわけではありません。是非何らかの形に見える成果を生み出す事を願っております。


パーム業界、あるいはPIM業界は、短い間に多くのチャンスがあったと同時に、試練の連続でもありました。その総括とも言える「Project Palm」には、やはり試練が待ち受けていたのでしょうが、しかしチャンスも潜んでいるに違いありません。


機長さんにはそのチャンスを掴んでいただき、是非世に送り出してもらいたいものです。


PalmOSの将来性は、現状では決して楽観視出来るものではありません。例えば商品としての価値は、少なくともスマートフォンには十分でない言う結論が出されてしまいました。


しかしながら、PalmOSをお金をもうける商品としてではなく、文化的資産として捉えるならば、これからも継承して行くべきであると考えられないでしょうか?


例えばLinuxがそうであったように、ソースコードを公開する事によって世界中のボランティア開発者による改良を可能にし、さらに完成されたPIMを提供したり、新たな用途が開けることによってパーム型コンピューターの可能性を高めることが出来るのではないでしょうか?


機長さんの今回のアンケートに始まる「Prokect Palm」の一連の奮闘が、Palmの集大成に終わるのではなく、新しいパーム時代の幕開けになることを、大いに期待するのであります。