ダウンサイジングはなぜ起こったのでしょうか?それは、CPU処理能力対価格性能比で、大型汎用機はより小型のコンピューターに勝てなかったからです。
つまり、コストパフォーマンスで劣勢に立ってしまったのです。原因は、ハードウェアにも、ソフトウェアにもありました。
まずハードウェアについて見ていきましょう。当時大型機は、コンピューターメーカーの技術力を誇示する為に、単独のCPUので性能を競い合い、その製造にはバイポーラトランジスター技術が使われていました。
バイポーラーは、常に電流が流れつづける為、発熱量が大きく、また高集積化が困難でした。また、民生品には使われていなかった為、生産量の上がらない製造ラインを占有しており、製造コストは高止まりしていました。
大きな発熱量は、水冷装置やコンピューター室の空調などを必要とさせ、全体の設備投資を膨らませました。
そこへ、Sunのようなワークステーションメーカーが、CMOS技術とRISCチップを引っさげて彗星の如く登場し、コストパフォーマンスでの優位性を武器に、大型汎用機を駆逐していったのです。
当時、RISCチップとそれまでのCISCチップの、計算能力の違いを比較した論文が多く出されていましたが、その多くが新しいRISCチップの将来性に軍配を上げていました。世の中が、ダウンサイジングに向かっていった為、すべてが同調してワークステーションに追い風となっていました。
また、複数のCPUを効率的に動作させるOSの技術も進歩していました。ですから、バイポーラで単独のCPUの性能を上げなくても、安いCMOSで作られたCPUを複数個並べる事で、同等の性能を実現できるようになっていました。
ハードウェアに関しては、コストパフォーマンスがすべてであり、その時既にバイポーラではCMOSに太刀打ちできなかったのです。
一方、ソフトウェアに関しては既にオープン・アーキテクチュア化が始まっていました。CPUのアーキテクチュアーごとに、異なるソフトウェア体系を必要とした大型機から、業界標準になり始めたUNIXへの流れも、既に止める事は出来ませんでした。
このようにして、バイポーラーからCMOSへ、専用OSからUNIXへと移り変わっていく過程で、大型汎用機から、ワークステーションへと移り変わっていったのです。
注釈: もちろんすべての業務が、ワークステーションに移っていったのではありません。CMOS技術を使った大型サーバーが登場すると、コストパフォーマンスがワークステーション並になり、銀行のオンラインシステムでは、今でも基幹を成しています。
しかし、昔はすべての業務を大型機で行っていたのが、中小型システムに置き換わったものが多くあったという事だと思います。
では、パソコンは、ダウンサイジングではどのような位置づけであったのでしょうか?次回は、そのあたりを見ていこうと思います。