390.ナパ・ワイナリー紀行6: The Outsiders (2004/10/04)

「エキストラ!!エキストラ!!」


夕暮れ迫るユニバーサルスタジオのゲートでは、それぞれに楽しかった1日を名残惜しそうに、大勢のお客さんが帰途につこうとしていました。


フェンスの上に立った係員が大声で叫んでいます。最初は何を言っているのかよく分からなかったのですが、どうやら今から何かが始まるようです。


良く聞いてみると昼間見学したスタジオで、本物のテレビ映画の撮影があると言うのです。そしてそのエキストラを募集しているのです。


ユニバーサルスタジオは、今ではフロリダや日本にもありますが、当時はハリウッドにしかありませんでした。ハリウッドのユニバーサルスタジオには、本当の映画撮影に使われているスタジオがあるのですが、スタジオツアーでトラムに乗ってその中を巡った時には、本当の撮影現場には出くわしませんでした。


題名は良く聞き取れなかったのですが、何となく「ナイトライダー」と言っているように聞こえました。実際、ユニバーサルスタジオ内にナイトライダーで使われていた車が展示されていましたから、私は本物のマイケルナイトに会えるのではないかと思い、参加してみることにしました。


総勢で50名程が集まり、昼と同じトラムに乗ってスタジオが並ぶエリアに移動します。たくさんのスタジオの建物が並ぶ間をトラムは走り続け、やっとその中のひとつの前で止まりました。トラムを降りてみんなでぞろぞろと中に入っていきます。


スタジオの大きな空間の中にボクシングのリングが造られていました。あとはただガラーンとした空間です。どうも、ボクシングの観客のエキストラだったようです。


全員を2つのグループに分けて、別々のシーンを撮るようです。1つ目のグループが撮影に入り、2時間近く経ってからやっと出番が来ました。


リングサイドの観客席に座り、メイクさんが顔のテカリを直したり、衣装係が時代設定に相応しくない服装の人を、別の衣装に着替えさせたりしています。どうも時代設定は、1960年代のようです。


「待てよ、マイケルが出てくるのはそんな昔だったっけ?」


そこで、やっと今撮影しているのが「ナイトライダー」ではないことに気付きます。そこで近くの同じエキストラの人に、どんな映画なのか聞いてみるのですが、その人もよく分からないと言います。


カメラが回っている撮影時間はほんの数分で、しかも登場人物が小さい声でぶつぶつ言っているだけで、何を演じているのかよく分かりません。


ボクシングの試合が終わって退場するシーンを撮って、取りあえず終了。ここまでに4時間ぐらい掛かりました。


ここからは、希望者だけ顔にボクシングで殴られたメークをして次の撮影をすると言うことでしたが、疲れてしまった半分以上の人たちはここで退散です。またトラムに乗って、誰もいなくなったゲートまで送ってもらいました。実際の撮影は、想像するほど面白いものではありませんでした。


撮影していたのは、1983年に公開された"The Outsiders"と言う映画の続編となるテレビ版だったようです。映画の方はフランシス・コッポラ氏が監督で、出演者にトム・クルーズがいたりスティービー・ワンダーが主題歌を歌っています。テレビ版では、コッポラ監督" Executive Producer"をされていたそうです。


ニーバム・コッポラのワイナリーを訪れて、10数年前にエキストラをしたのがどんな映画だったかを、初めて知ったのでした。


389.ナパ・ワイナリー紀行5: ニーバム・コッポラ (2004/10/03)

観光でナパのワイナリーを訪れるとしたら、今回ご紹介するニーバム・コッポラ(Niebaum-Coppola)は外すことが出来ないでしょう。ハイウェイ29号線沿いのナパ・エリアの、ほぼ中央に位置するRutherfordにあります。


1880年代に創業したInglenookと言うワイナリーを、映画監督フランシス・コッポラが手に入れたのは1975年のことでした。その後何度か拡張を行い、歴史的建築物であるシャトーを含め現在の姿に至っています。


このワイナリーが、ナパを代表する優秀なワインを産み続けてきたことは言うまでもありませんが、観光の名所として名を馳せているのは、オーナーのフランシス・コッポラ氏の存在によるところが大きいでしょう。


言わずと知れた映画「ゴッドファーザー」の監督として、あまりにも有名です。監督本人が時折ワイナリーの庭に現れ、気軽にサインに応じている光景もよく見かけられるそうです。


1882年に建てられたシャトーの内部は歴史を感じさせる装飾が施され、建物自体が博物館のようです。ワインの試飲をするコーナーがあるショップには、ワインの他にもいろいろなものが売られていて、見て回るだけでも十分に楽しむことが出来ます。


ここで売られている商品のほとんどは、監督自ら世界中を旅行した際に気に入ったものの中から選ばれたものだそうです。ワインに関係がないものも多いのですが、ここ以外ではなかなか手に入らないものもありますから、お土産探しには良いかも知れません。


ショップの入り口近くには映画に関する展示があり、昔の映画の撮影に使われた道具が並んでいたり、映画やワインでこれまでに受賞してきたトロフィーや賞状が飾られていたりします。「ゴッドファーザー Part2」で1974年に受賞したアカデミー賞のトロフィーもその中にありました。


ここはどちらかと言うと、ワイン好きよりも映画ファンに喜ばれるワイナリーかも知れません。


ところで、シャトーの映画関係の展示の中に、フランシス・コッポラ監督の過去に手掛けた作品が紹介されているのですが、その中に聞き覚えのある作品名がありました。


"The Outsiders"!!


実は私、これに出演したことがあります。

388.ナパ・ワイナリー紀行4: ベリンジャー (2004/10/01)

さて、USのワイナリーの中で一番古いところが何カ所かあると前書きで書きましたが、今日ご紹介するベリンジャー(Beringer)もその中のひとつです。


このワイナリーのヒストリーの中で、"The Oldest Continuously Operating Winery
in the Napa Valley"
と紹介されています。禁酒時代も密かに醸造を続けていたのでしょう。ワイナリーの設立は、1876年と記されています。


これまでにも数多くの優れたワインを生み出し、品評会やワイン雑誌のランキングでも常に上位を占めて来ました。私が初めてベリンジャーを知ったのも、ワインの雑誌のテイスティングコーナーを読んだ時でした。


ナパ・バレーのハイウェイ29号線を北上し、ワイナリーの集まった地域の一番北のエリアのセント・ヘレナ(St.Helena)と言う町にあります。歴史があることを示すように、風格のある石造りの建物が、綺麗に整備された庭園の中に点在しています。


今回訪れたときは既に夕方近くになっていたので、ワインショップに行ってみました。古い木組みの建物は天井が高く、かつてここでワインを造っていた事を物語っています。


ギフトショップの一部が、テイスティングコーナーになっており、気に入ったワインがあればすぐに買い求めることが出来ます。


日本でも、比較的容易にベリンジャーのワインを探すことが出来ますが、さすがにこれ程の種類が一同に並べられているのは圧巻です。ここでは、テイスティングはせずに、ワインショップをじっくり歩き回っておいしそうなワインを選ぶことにしました。


日本では見たことのないシリーズのものがあり、選ぶだけでも楽しめるものです。じっくり見て回った結果、30ドルぐらいのものを1本買ってみました。


ここのワイナリーはナパの中でも規模が大きいため、ワインショップもかなり観光地化されている感じがします。ワインショップの中にも、ワイン以外に記念の品になりそうなものが並べられています。


さて、ここで買ったワインは、その日泊まったホテルの部屋で食事した時に頂いたのですが、なかなかおいしいワインでありました。ベリンジャーのワインは、どれも期待を裏切らないように思います。


日本でベリンジャーを探すと、"Stone Cellars"と言うシリーズのワインをよく見かけます。6種類の品種のワインがあり、ディスカウント店では1000円ぐらいで売られています。


コスト・パフォーマンスの高さは申し分ありません。特に"Chardonnay"は、スパイシーで少しスモークされた様な渋い香りがします。


この値段で買えるワインの中では出色の出来と言えるでしょう。是非、一度お試しください。

387.ナパ・ワイナリー紀行3: オーパス・ワン (2004/09/30)

ロバート・モンダヴィのワイナリーのすぐ斜め向かいに、オーパス・ワン(Opus One)はあります。今のカリフォルニアワインを語る上で、オーパス・ワンは欠かすことができません。


カリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィと、フランスのボルドー・シャトーワインのバロン・フィリップの、ジョイント・ベンチャーとして紹介されてからまだ4半世紀しかたっていないにもかかわらず、カリフォルニアワインの中で不動の地位を確立しています。


2人が1970年にハワイのワインコンベンションで出会ったのが、共同事業のきっかけであったと言います。その8年後、ボルドーに集う2人が、事業の骨子を決めるのに1時間もかからなかったといいますから、よほど意気投合したのでしょう。


ハイウェイ29号線から眺めるワイナリーの建物は壮観です。神殿や古墳に似ていると言われるようですが、サンフランシスコの銀行なども手がけた建築家スコット・ジョンソンによる建築物は、ゲートを車でくぐることを一瞬躊躇させるほどの存在感に満ちています。


内部に入ると落ち着いた雰囲気で、どこかの豪邸に招かれたかの錯覚に陥ります。オーパス・ワンのテイスティングは、開始時間がグループごとに決められ、時間が来るとモダンな大理石張りの空間に案内されます。


グラス1杯、25ドル!普通なら「高い!」と言って帰るところですが、「オーパス・ワンに出会えるだけ幸せである」とまで言われるそうですから、ここまで来たら奮発してみましょう。


ロバート・モンダヴィで試したワインをさらに研ぎ澄ましたかのような、見事なCabernet
Sauvignonです。
華やかさはこちらが勝っているでしょう。なるほど確かに、ワインの味や香りを味わう以前に、幸せな気分になってきます。


テイスティングに使われていたワインは、1999年2000年のものでしたが、最近のビンテージで優れているのは1995年1997年のものとの事で、これはナパのどのワイナリーでも同じ事を言われましたので、カリフォルニアで作柄が良かった年なのでしょう。


ここのワイナリーで試飲している他のお客さんは若い人たちが多く、家族連れはほとんどいません。ワイナリー・ツアーの途中に気軽に立ち寄るようなワイナリーではないようです。確かに、お土産に1本買って帰るというのも気安くできる訳ではありません。その代わりにオーパス・ワンのグラスが気に入ったので、記念に買い求めて外に出ました。


きれいに整備されたぶどう畑が見渡せる丘の上でしばらく記念写真を撮っていると、テイスティングルームで一緒だったお客さんたちがリムジンに乗って帰って行かれました。


この建物は建築的な美しさを誇るだけではありません。ワインの製造過程において、通常使われているポンプの代わりに、重力を利用して自然に落下させる様に設計されているそうです。ワインを丁寧に扱うことによって、華やかさが増すのだそうです。


ワイン作りの理想を求め惜しげもなくお金を注ぎ込み、コンセプトをそのまま具現化したこのワイナリーがこれから長い年月を刻んでいく時、歴史に残るすばらしいワインを残していくに違いありません。

386.ナパ・ワイナリー紀行2: ロバート・モンダヴィ (2004/09/29)

まずナパのワインを語る上で忘れてはならないのが、今日ご紹介するロバート・モンダヴィ(Robert Mondavi)でしょう。設立されたのが1966年と比較的新しいにもかかわらず、カリフォルニア・ワインを一級品として世界に知らしめたことにより、「カリフォルニア・ワインの父」と呼ばれています。


ステンレスタンクによる低温発酵と、フランスの伝統的なオークの樽による熟成方法を組み合わせたのを始め、1990年代からはNASAの衛星写真によってぶどうの健康・生育状態をワイン作りに生かしてきました。伝統的な手法と最新の技術の融合によって、肥沃なカリフォルニアの土地に合ったぶどう作りを行い、最高のワインを目指したのです。


サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡って80Km程北上すると、ナパ・バレーに到着します。すでにあたりは一面のブドウ畑です。ハイウェイ29をさらに北上するとOakVilleと言う町にロバート・モンダヴィのワイナリーがあります。


優雅なたたずまいの建物には、いつも多くの観光客が訪れています。ナパでナンバーワンと称されるワイナリーツアーは人気があります。ワイナリーの歴史からワイン作りの全工程、最後にテイスティングとワインのお土産付きと来れば、一度試しておく価値はあるでしょう。


工場見学はさておき、とにかく試飲がしたい場合は、テイスティングルームに直行するのもよろしいかと思います。(かく言う私も直行しました。) テイスティングには3つの部屋が用意されていて、それぞれ試すことができるワインのグレードが異なります。


1つ目の部屋はワイナリーの入り口に一番近く、テイスティングは1人7.5ドルワインショップも兼ねてカジュアルな雰囲気です。ただ、テイスティングできるのは普及価格帯のワインに限られます。2つ目の部屋はもう少し落ち着いた雰囲気で1人15ドルお客さんも落ち着いてワインを味わっておられる様子です。


しかしせっかくここまで来れば、あまり日本ではお目にかかれないワインを試してみたいものです。そこで3つ目の部屋でテイスティングと参りましょう。この部屋は、どこかのお屋敷のパーティーに招かれたような雰囲気があり、お客さんも腰を落ち着けて談笑しています。


古くて大きな皮製のテーブルと椅子があり、暖炉の灯が暖かい雰囲気をかもし出しています。


テイスティングできるワインは、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーの中でも選りすぐったものばかりです。ワインショップで1本150ドルはするワインを4種類テイスティングできて1人30ドル。ほとんどがCabernet Sauvignon(カベルネ)ですが、Chardonnay(シャルドネ)も選ぶことができます。


まずは1999年物2000年物のそれぞれ2種類のぶどう畑から作られたCabernet Sauvignonをテイスティングしてみました。


はっきり言ってショックを受けました。これまでにこれほどタンニンの渋みが際立ったワインに出会ったことがありませんでした。いかにもこれから年数を重ねるごとに深みを増していくことを予感させます。カリフォルニアワインの真髄を見たような気がしました。


その後、Chardonnayも追加でテイスティングしてみましたが、Cabernet
Sauvignon程の特徴は感じられなかったのが少し残念でした。


ロバート・モンダヴィによるワインの中で、日本で手に入れやすいものとしては、Woodbridgeと言うブランドがあります。本来ロバートの親たちが1800年代にイタリアから入植した町の名前なのですが、ロバート・モンダヴィのサブブランドとして、求めやすい価格で品質の良いワインを提供しています。


カリフォルニアワインを世界に知らしめたロバート・モンダヴィは、ナパ・バレーのワイナリーの中でも、その代表格と言えるでしょう。