510.muchy.com更新停止 (2005/06/08)

muchy.comの更新停止のニュースは、さすがにインパクトが大きいですね。


言うまでもなくパームの最大の魅力は、世界中のパームウェア開発者の手によるソフトウェア・ライブラリーでしょう。例えパーム標準のPIMに不満があろうとも、膨大なソフトウェア・ライブラリを探せば、必ず期待に応えるソフトウェアを探し出すことが出来ました。


だからこそ、自由にカスタマイズすることによってパームを育て上げることが出来ましたし、パームの無限の可能性を信じることが出来たのです。


私も、最初のワークパッドを手に入れたときは、パームウェアをむさぼるように探し回ったものでした。おそらく、パー無関連のサイトで、一番始めに頻繁に訪れるようになったのが、muchy.comだったように思います。


一体どのぐらいのプログラムをダウンロードしたのか、今となっては分からないほどたくさんのソフトウェアを、利用させて頂いたように思います。


また、ハードウェアのレビューは、よく参考にさせていただきました。常にニュートラルな姿勢によるレビュー記事は、安心して読むことが出来ました。


実際には何人かのライターの方々が、それぞれの分野を担当されていたそうですが、底がどこにあるか分からないほどの情報量でありながら、全体としてすっきりとまとまっていて使いやすいサイトでした。


主催者のムッチーさんと言えば、私にとっては伝説の人のようでありました。これまでにお会いすることが出来なくて残念ですが、またどこかで姿を変えて伝説から抜け出してこられることを期待したいと思います。


長い間、お世話になりました。どうもありがとうございました。

509.アップルがインテル製MPUを採用する時 (2005/06/07)

さすがにパーム系サイトは、アップル情報が早いですね。既にたくさんのサイトで紹介されていますが、アップルがついにインテル製プロセッサーを採用することになるそうです。


これで、ほとんど全てのパソコンのMPUインテル製となり、片やほとんどのゲーム機IBM製MPUを採用するという棲み分けが完成することになります。パソコンとゲーム機がそれぞれ独自の進歩を遂げるためには、いずれこうなる運命だったのかも知れません。


パソコンとゲーム機に要求されるプロセッサーの要求性能はかなり異なりますから、パソコンに特化したインテル製MPUの方が、あらゆる面で使いよさがあるのでしょう。しかし、結果としてMac
OSがWindowsと似てくることは避けてもらいたいものです。


汎用品であるDRAMの世界では、高いシェアを確保した企業以外は長らく苦戦を続けてきました。同じものを競い合って製造する場合は、生産規模を拡大したものが勝者になるのです。


パソコンのMPUも汎用LSIですから、ひとつのパーツを如何に多くの機器に搭載することができるかで製品の優劣が決まります。アップル1社にMPUを供給し続けることは、そもそも無理があったのかもしれません。


汎用品としてのMPUが、ひとつのものに集約されていくと言うのは、考えようによっては昔のビデオ規格と同じであると言えます。すなわち、最初は複数の規格が勢力を拮抗させていても、いつかは強いものがひとつだけ残っているのです。


ビデオテープは「メディア」と呼ばれますが、MPUもひとつの世界を築いている点において「メディア」と考える事ができるかも知れません。パソコンのOSも同様にメディアであると考えるならば、いずれはひとつになってしまうと言うのは、いささか早計でしょうか?


さて、パソコンのMPUがインテルに統一されたと言っても、それは汎用品の話です。おそらくMPUの数としては、MPUコアとしてLSIに搭載(エンベッド)されているものの方が、圧倒的に多いでしょう。


今のデジタル家電と言われるものには、軽く10個ぐらいはMPUが搭載されているでしょうし、その中には32ビットの高速MPUも含まれています。


カスタマイズされたチップの中には、MPUコアを始め各種演算器データバスデジタル・アナログ・コンバーターDRAMなど、ありとあらゆる電子回路がひとつのチップとして集積されているのです。


今はアップルがMPUをインテル製に変更することがニュースになりますが、パソコンのMPUがいつの間にかマザーボードから消えてしまうのも、それ程遠くはないかも知れません。

508.「脱線はしないものだと思っていた!」 (2005/06/03)

JR宝塚線の悲惨な事故から1ヶ月以上が過ぎました。もうだいぶ前のことのように感じますが、まだまだ大勢の方々が入院生活を強いられておられますし、亡くなられた方々の無念の思いは弱まることはないでしょう。


JR大阪駅に到着する列車では、運休に伴う振り替え輸送についてアナウンスが繰り返されています。「脱線による事故の為、振り替え輸送を行っております。」と毎日聞いていても、脱線と言う言葉の異様な緊張感を毎回感じない訳にはいきません。


事故が起こった当初は、「速度制限を何十キロもオーバーするなんて、常識では考えられない。」と語る関係者がほとんどでした。しかし、最近のテレビ報道でJRの現役の運転手が、「スピードオーバーで脱線するとは思っていなかった。」とも言っています。


極端な場合、制限速度の倍の速度で走っても脱線はしないと信じていた運転手もいたようです。本来重要な意味を持つはずの制限速度に対して、その捉え方にばらつきがあったことに注視するべきでしょう。


自動車の運転においても、制限速度は常に付きまといます。直線区間の制限速度が、カーブや交差点の近くでさらに制限されることは良くあることです。


もう15年ほど前になりますが、USの地方国道を夜中に走っていた時のことです。日本に比べて路肩が広いため楽に走ることができる反面、周りが真っ暗ですから、道路がどこまであるのかを注意していなければなりませんでした。


センターラインが消えかかっていたため、カーブの手前にある右カーブか左カーブを示す矢印の標識を頼りにしました。矢印の下にはカーブでの制限速度が書かれています。ある所で州境を越えてから、道路はそれまでと同じように続いているのですが、何かが変です。


カーブの途中でブレーキを踏まなければ、カーブを曲がりきれないのです。それまでは、カーブの手前にある制限速度を10マイルぐらい上回っていても大丈夫だったのが、隣の州に入った途端、制限速度まで速度を落とさなければ曲がりきれなくなったのです。


カーブにおける制限速度は、限界の速度にある程度の安全率を加味して決めるものでしょうが、隣同士の州においてさえ、限界速度や安全率の設定に差があったと言うことでしょう。それからは、カーブの制限速度を忠実に守って運転したことを覚えています。


高速道路でトラックやバスが転倒する事故があります。重心が高いこれらの車両は、車線変更のような左右に連続してハンドルを切る動作を急に行うと、いとも簡単に倒れてしまうそうです。


また、ヨーロッパでは高速道路にシカなどの大型動物が飛び出すことを想定して、新型車を認定する時、急激な連続ハンドル操作を伴う「エルクテスト」なるものが課せられています。ベンツのAクラスが当初見事に転倒したそうですが、意外と自動車の限界性能は低いものなのでしょう。


列車がカーブで速度超過で脱線したと言う事実。安全神話が崩壊したと言われています。カーブを曲がりきれなかったという、もっとも基本的な運転技術に未熟さが残っていたのかもしれません。


「脱線はしないものだ」から「脱線するかもしれない」という意識の変化が、重要な意味を持つように思います。


(私もそろそろ振り替え輸送に疲れてきました。)

507.「ドアが閉まります」から「ドアを閉めます」に変わった時 (2005/05/26)

もう2、3年前になるでしょうか、JRの大阪近郊を走る電車で、車両のドアが閉まる時の車掌のアナウンスが変化した時がありました。


それまでは「ドアが閉まります」であったのが、「ドアを閉めます」になったのです。車掌のアナウンスに限らず、駅の構内アナウンスでもほとんど同時に変わっていったように思います。


聞きなれた言葉が急に変わると違和感があるものです。それと同時に、以前より少し厳しい言い方であるように感じました。「なんとなく閉まってくるドア」から「意思を持って閉まって来るドア」に変わったのです。


例えば京浜急行電鉄では、以前から「ドアを閉めます」を使っているようですが、確かに他の鉄道会社に比べて、駆け込み乗車をしてドアに挟まった乗客に対して厳しいように思います。


また、「JRでは定時運行に努めております。駅でのスムーズな乗り降りにご協力ください。」という決まり文句も、この頃から始まったように思います。


当時は、年に数回のダイヤ改正の度に速度の向上が図られ、新快速の新型車両によって130Kmの高速運転が始まった頃でした。主要な駅間に要する時間が、新しいダイヤが発表されるごとに短縮されていきました。


おそらく高速運転だけでは新ダイヤを実現するには十分でなく、停車駅での乗降時間も削られていったものと思われます。


インターネットで調べてみると、日経ベンチャーのサイトに“「駆け込み乗車」という習性につける薬はあるか”と記事がありました。


その記事によると、どうも「ドアを閉めます」と言い出したのは、JR宝塚線宝塚駅2001年8月に始めたのが最初であるとされています。宝塚駅が、今回の事故を起こした列車の始発駅であったことは、単なる偶然ではないかもしれません。


JR宝塚線の事故から1ヶ月が経ちましたが、停車駅での乗降時間を短縮したことが、列車の定常的な遅れの原因であるとされています。


JR西日本は、「ドアを閉めます」、「定時運転に努めております」を連呼するようになる以前のダイヤに、戻す必要があるのかもしれません。

506.LifeDriveから始まる新しいPDAの時代 (2005/05/24)

企業の顧客情報が漏洩したというニュースが、後を立ちません。インターネットのサイトが不正にアクセスされたり、ノートパソコンを盗まれたという類の事件は、日常茶飯事になってしまいました。


サーバーが狙われた場合は、サーバーシステムのセキュリティーを強化することになりますが、ノートパソコンを盗まれた場合は、所有者に管理の徹底を促すしかありません。


このノートパソコンの管理と言うのが意外と厄介なのです。第一常に身につけておくには大き過ぎます。また、パスワードをかけろと言われても、ディスクを取り出して他のパソコンにつなげばデータが読めるのでは、意味がありません。


本体やディスクにそれぞれパスワードをかけることができ、ディスクを取り出しても他のパソコンではアクセスできない製品もあるようですが、それでも全てのパスワードをかけていないケースが多い現状では、完全にノートパソコンからの情報の漏洩を防ぐのはそう簡単なことではなさそうです。


その対策として、ステートレス・デバイスディスクレス・パソコンを開発したパソコンメーカーもあります。鳥取県がディスクのないパソコンを一斉に導入しようとしているのも、ディスクが付いたままのノートパソコンでは、いつまで経っても情報の漏洩を防ぐことができないと判断したからでしょう。


個人情報保護法が施行されたこともあり、組織として個人情報の管理を徹底しておくことが必要であるという認識が、広まってきているのでしょう。


一方、PalmOneがこの度発表した新製品LifeDriveは、PDAでありながら4GBのディスクを内蔵しています。ディスク内蔵で先行するザウルスと共に、今後のPDAのあり方を問うているように見えます。


情報の漏洩の原因になりかねないとハード・ディスクを、パソコンから外し始めたノートパソコンと、そのディスクを逆に内蔵し始めたPDA。これらの流れが同時に起こっているのは、単なる偶然でしょうか?


ノートパソコンが移動中にどこかに置き去りにされがちなのは、常に身に着けておくには大き過ぎ、重た過ぎるのが理由だと思われます。それに比べ、PDAは圧倒的に小さくて軽いですから、どんな時でも身に付けておく事ができます。


つまり、重要なデータが入ったディスクを、盗難の可能性が高いノートパソコンに内蔵することをやめ、常に身に付けることのでき安全なPDAに装備するようになってきたと言うことではないでしょうか。


機長さんが5月18日のProject Palmの中で、


「本当の意味でポケットに入るノートパソコン代理」

と言われている通り、PDAがノートパソコンに取って代わる日が近づいているのかも知れません。ノートパソコンが、さらなるダウンサイジング化を始めたのではないでしょうか?


ハードウェア的には、これまでのハンドヘルドハード・ディスクを追加しただけに見えるLifeDrive戦略が、見えてきたような気がします。


その目指すところは、ダウンサイジングをもう一歩進め、これまでのIT機器の主役であったノートパソコンに取って代わることにあったのです。さらに、ただダウンサイジングするに留まらず、これまでのノートパソコンにはなかったエンターテインメントをも包含する可能性さえも示しているのです。


そう考えると、handheldsではなくmobile managerでなければならない意味が理解できますし、LifeDriveとはまさに、生活(人生)の全てをこれひとつで操る、究極のIT機器を狙った戦略製品であることが見えてくるのです。


これまで、携帯電話とノートパソコンに挟み撃ちされていたPDAが、IP電話によって携帯電話の牙城を崩し、ハード・ディスクによってノートパソコンの領域を侵し始めたのです。


「PDAの時代はこれからだ!」


新たなIT機器の覇権争いが、今静かに始まっています。