559.パソコンの代わりにW-ZERO3はいかが? (2005/12/18)

「新世代モバイルコミュニケーション端末」としてついに発売された“W-ZERO3”ですが、徐々にパーム系サイトでも使用レポートが掲載され始めています。


もし、これが純粋にパームOS搭載機であったならば、おそらくパームコミュニティーはもっと盛り上がったことでしょう。ソニーCLIEの開発をまだ継続していた頃ならば、それは十分あり得た事だったでしょうが、今となっては叶わぬ夢となってしまいました。


W-ZERO3は、スマートフォンと呼ばれる新しいモバイル機器を、広く展開していこうという意欲的な製品です。ウィルコム、シャープ、マイクロソフトという、それぞれの分野で確固たる地位を築いてきた企業が、スマートフォンの日本における市場性に、確信を持って投入してきた自信作と言えましょう。


この製品は、携帯電話の新製品という捉え方も出来るでしょうし、PDAの発展型と捉えることもできます。発売当日に行列が出来るほどの人気ですから、携帯電話やPDAを越えた魅力を持った製品である事に、間違いはなさそうです。


ところでこの製品に対して、これまでコストの問題でパソコンを導入できなかった企業からの引き合いが、予想以上に多いそうです。ノートパソコンより機動性があり、ネットワークへのアクセスも容易で、しかもコストを押さえることが出来ますから、これまで二の足を踏んでいた企業がこぞって採用を検討しているそうです。


このノートパソコンを置き換える分野こそが、パームが真っ先に進出しなければならなかったのですが、日本の市場ではその前にパームが力尽きたと言ったところでしょうか。


これから日本では、本格的なスマートフォンの普及が始まるでしょう。戦いはまだ始まったばかりです。ひょっとしたらまた再びパームが、新しいスマートフォンを携えて、日本の市場に戻ってくる日が来るかも知れません。


ダウンサイジングは、これからだ!(いつまで言ってんねん!)


549.ダウンサイジングの鐘がなる (2005/10/21)

W-ZERO3という、一見凝ったようでいて実は成り行き任せのネーミングと、「新世代モバイルコミュニケーション端末」という、これまでにも幾度となく使われてきた当たり障りのないキャッチコピーを引っさげて、ウィルコム、マイクロソフト、シャープの大連合がやってきました。


何となく控えめな演出によって、携帯電話ノートパソコンの間のニッチを狙ったかのような印象を持ちますが、私はこの製品が、これからのモバイルライフの主導権を握るものと確信いたしました。


日本でのスマートフォン時代の到来が本格化する前触れでもありましょう。しかし、これは進化した携帯電話の一形態であるだけに留まらず、これまでノートパソコンと携帯電話の間で分断されていた真のコンピューティングと通信の融合が、やっと実現するのではないかと期待されます。


思えばこれまで、Palmを応援してきたのは、携帯電話とパソコンの間に割ってはいる分野で、Palmが主役になって欲しかったからに他なりません。PalmTrotterで取り上げてきたダウンサイジング関連の雑記はたくさんありますが、Palmが果たせなかった夢がPalm以外の手によって実現されるということはとても残念であります。


今回の協業は見事なものでした。PHSのウィルコム、OSのマイクロソフト、そしてハードウェアのシャープと、完璧に役者が揃ったと言えましょう。Palmであっても、あるいはソニーであったとしても、単独では決して成し遂げることは不可能だったでしょう。


携帯電話にPIM機能を組み込んだだけならスマートフォンの範疇であり、現在ではそれほど珍しくありませんし、通信機能に重点を置いたシグマリオンも以前から安定した人気がありました。


しかし、W-ZERO3をもっとも特徴的な製品にしているには、何と言ってもマイクロソフトの参画だと思います。マイクロソフトが優れたパートナーと一緒になったことで、ついにパソコンと携帯電話の垣根が取り去られようとしているのです。


結局、パソコンのOSを牛耳っているマイクロソフトでなければ、パソコンの機能をハンディに持ち歩けるようにはできないと言うことかも知れません。


当初はPHS端末としての販売に限定されるようですが、無線LANが通勤電車の中で可能になってくるご時世ですから、PHS端末としてだけではなく、よりPIMやモバイルパソコンとしての需要が見込めそうです。


特にマイクロソフト・オフィス関連のファイルの編集作業もできることによって、モバイルと呼ぶには重すぎたノートパソコンを必要とする機会が今後減ってくることが予想されます。


その他、無線LAN環境でのIP電話としてSkypeを搭載し、音楽ファイルの鑑賞やゲームに至るまで、全てのモバイル・アプリケーションを丸ごと飲み込もうとしているようです。


製品発表の様子から、製品のネーミングや方向性、ターゲットとするユーザー層が絞り切れていない感じがありますが、逆にそれだけ特定のユーザー層に限らず、多くの人々から支持される可能性があると言えましょう。


Palmが、今後の製品にマイクロソフト製OSを採用するとアナウンスしたのは、PalmOSの限界を感じていたからでしょうか?


今ははっきりとした製品のカテゴリーを持たないW-ZERO3ですが、近いうちに新しいネーミングが与えられるのではないかと思います。


例えば、そうですね、コミュニケーター&コンピューターで「コムコン」はいまいちですか。では携帯電話とパソコンを引っ付けて「ケイコン」はもっといまいちですね。やっぱり手のひらに乗るコンピューターと言うことで「パムコン」ですかね。


パーム・コンピューティングよ、もっとがんばれ!

548.新しいパーム・ハンドヘルドは集大成か (2005/10/17)

USでPalmの新製品、TXZ22が発表されてしばらく経ちましたが、評判はなかなか良いようです。特にびっくりするような目新しさはありませんが、それがかえって安心感を与えるのでしょう。高機能機種であるTXと普及価格帯のZ22の2本立ても、製品の方向性が明確で好感を持ちます。


特にPalmOneからPalmに戻ったブランドには、「これぞプロパーなり」といった意気込みを感じます。またTungstenZireの系列であることは確かですが、あえて名前をすっきりさせたあたりにこれまでとの違いを感じます。個人的には、倒産したUSのディスカウントストアのような、Zireという名前が隠れたことは好ましいと思います。


もちろん日本語対応ではないことで、以前CLIEの新製品が発表されていたころに比べると、国内の反響は大きいとは言えないでしょう。しかし、USのPalmがスマートフォンではなく、販売が低調であると言われているハンドヘルドの開発を継続していることに、拍手を送りたい気持ちです。


どちらも魅力的な製品であり、特にコストパフォーマンスの高さが優れています。デザイン的にTXは少しばかりシンプルすぎるかなとも思えますが、ここは調子に乗って、次期新製品にはフルキーボードを装備した"TZ"なんぞを期待したいものです。


ところで少し気になるのは、どちらの製品もあまりにまとまりすぎていると思えることです。機能的にもデザイン的にも冒険をしているところが全くないと言いましょうか。


しばらく前に、Palm社がWindowsを採用すると発表しました。あまり考えたくありませんが、もしPalm社が今後PalmOS採用の新製品の開発を止めるとすれば、今回の新製品2機種が最後のPalmOS機になってしまうかもしれません。


この2機種が、PalmOSを採用する最後の製品にならなければ良いなと思います。

547.パーム・コミュニティーはオタクの集まり (2005/10/07)

IT Media Newsに、「オタクは遍在する――NRIが示す『「5人のオタクたち』」と言う記事が掲載されています。野村総合研究所(NRI)オタク市場予測チームが、オタクの定義を時代に合わせて再定義して発表したそうです。


オタク人口の合計は172万人とした上で、これまで特定の分野に限られてきたオタクの活躍する場を、もっと一般的な旅行や自動車の分野にまで広げています。


ここでオタクとして認められるための条件は以下の通り。



  • ある特定のジャンルにはまっている。
  • 理想を追い求めて消費傾向を強めていく。
  • 消費するごとに愛着が増していく。
  • 自分なりのこだわりを持つ。
  • 他人に広めようとして、外に向かって主張を始める。

いや正にパーム愛好者そのものではないでしょうか。おまけにこのようなオタクを例えて、「巨大重力場周辺の星のようなもの」とは参りました。


さらに、オタクに共通する行動特性を聞くと、なおさらパーム愛好者の事を言っているようです。



  • 他人に良さを理解して欲しいと共感を要求する。
  • いろいろなの物を収集したいと思う。
     
  • 自分なりの考えを持ちたいと思う。
  • 自分の意見を広めたいと思う。
  • 改造によってオリジナルなものを作ろうとする。
  • 気の合った仲間で集まろうとする。

パーム・コミュニティーに在籍しておられる方は、ほとんど該当しているのではないでしょうか。これまでオタクと言うのは、コミック同人誌萌え系アキバ系などの特殊な趣味の人たちのことだと思っていましたが、私たちは完璧にオタクの一分野を形成していたようです。


オタクと言う言葉を、どこか遠くのものとして聞いていたのですが、自分がそのオタクであったとは気付いていませんでした。


例えば携帯電話のようにすでに広く普及したものならば、いまさら他人に共感を要求する必要もありませんから、オタクと呼ばれることもないでしょう。そこには趣味性より実用性が優先されるからです。


しかし、パームの利用が一部の愛好者だけに留まった理由が、その高い趣味性にあったとしたら、それはそれで喜ぶべき事なのかもしれません。


奥の深い趣味になればなるほど、限られた人にしか理解できないのが常でしょうから。

546.マイクロソフトの野望 留まる所を知らず (2005/09/27)

パーム次期スマートフォンのOSに、マイクロソフトウィンドウズを採用するというニュース。パソコンのOSの覇者となったマイクロソフトが、携帯電話のOSの分野に本格的に乗り込んでくるようです。


これまでPDAのOSにおいてライバル同士だったパームとマイクロソフトが手を組むと言う事で、新しい時代の幕開けを期待したいですが、要はパームがパームOSを見限ったと言うことですから、マイクロソフトとしてはライバルがひとつ消えたことになります。


もちろんAccess社に買収されたパームソースが、今後も携帯電話の分野でパームOS製品を出してくるでしょうが、携帯電話では国際標準から外れた日本市場の枠に閉じ込められてしまうのではないかと思われます。


パームがいかにパームOSを今後も継続して製品に採用していくと言っても、パームOSのPDAあるいは携帯電話機におけるシェアーの低下は避けらないでしょう。


リナックスがPDAや携帯電話のOSとして取りざたされてきましたが、一方のウィンドウズが着実に地盤を固めようとしています。パソコンの販売台数が世界的に頭打ちになっている中、新しいウィンドウズの適用分野としてモバイルの主流である携帯電話の分野を重点的に攻めるのは当然のことでしょう。


20年ほど前はオープン・アーキテクチュアーなどの言葉がもてはやされ、オープンこそが新しいコンピューティングの姿であると信じていたものが、時が経ってみれば結局以前にも増して閉ざされた、1社独占による競争のない世界になっていたとは皮肉なことです。


やはりOSと言うのは一種のメディアとしての性格を持つのでしょうか。OSを製品として供給する企業が存在する限り、健全な発展はあり得ないように思います。複数の企業が切磋琢磨しながらよりよい製品を目指すという一般の工業製品とは、異なるコントロールが必要なのではないかと思います。


メディアは社会の共有財産でなければなりません。そこに人々が知恵を出し合い、よりよいものに高めていくことが望まれるのです。


コンピューティングと通信の融合は、マイクロソフトに全てのモバイル機器のOSを独占することを許すかもしれません。これは、健全な競争に基づく市場経済の目指すところではありません。


このニュースを聞いて、パームがウィンドウズを採用することに新たな展開を期待する人もいらっしゃるでしょう。


しかし、私個人的には、少なくともモバイル環境においてウィンドウズの対抗勢力のひとつであったパームが、スマートフォントというお土産を持ってマイクロソフトの軍門に降る事は、非常に残念でなりません。


近い将来訪れるユビキタス社会を実現するために、パソコンをさらにダウンサイジングし、通信をも取り込んだ手のひらサイズの端末に、パームはなっていたはずだったのです。


私にとってのパームは、終わったのかもしれません。